
海外移住におすすめの国は、何のために移住するかで決まります。年金で暮らすならタイ・マレーシア・ポルトガル・パナマのように年金や資産で取れる長期滞在ビザがある国、働いて永住権を取るならオーストラリア・カナダ・ニュージーランドのような技術移民の国、投資で居住権を持つならポルトガルやギリシャのゴールデンビザが候補になります。一方で、海外移住が「やめとけ」と言われるのは、円安で生活費が上がる、年金に日本と移住先の両方で税金がかかり得る、高齢になると医療保険に入りにくい、外国の国籍を取ると日本国籍を失う、といった問題が移住後に表に出るからです。本記事では、外務省の統計で日本人が多く住む国を確認したうえで、目的別のおすすめの国と、移住前に確認すべき注意点を整理します。国ごとの条件と費用は、各国の記事で詳しく解説しています。
※制度と金額は2026年10月9日時点の公表情報です。円換算は1ドル=157.95円、1ユーロ=176.87円、1豪ドル=109.89円、1バーツ=4.70円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2026年10月8日の仲値)で計算しています。
目次
結論:おすすめの国は「移住の目的」で決まる
海外移住で使う在留資格(ビザ)は、国ごとに「誰を受け入れたいか」がはっきり分かれています。自分の目的と、その国が求める条件が合う国が、その人にとっての「おすすめの国」です。
| 移住の目的 | 候補になる国 | 主な条件の例 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 年金・老後 | タイ | 50歳以上、預金80万バーツ(約376万円)か月6万5,000バーツの収入 | タイ移住の条件と費用 |
| 年金・老後 | ポルトガル | D7ビザ:月920ユーロ(約16.3万円)以上の年金・不労所得 | ポルトガル移住のビザの種類と条件 |
| 年金・老後 | パナマ | ペンショナード:生涯の年金が月1,000ドル(約15.8万円)以上 | パナマ永住権・市民権取得の完全ガイド |
| 資産で長期滞在 | マレーシア | MM2H(シルバー):定期預金15万ドル(約2,369万円)と不動産の購入 | マレーシアMM2Hの条件と費用 |
| 働いて永住権 | オーストラリア | 技術移民:45歳未満、英語、技能審査、ポイント65点以上 | オーストラリア移住と永住権の条件 |
| 働いて永住権 | カナダ・ニュージーランド | カナダは英語・学歴・職歴などの点数、ニュージーランドは資格・職業登録・収入などで6点と英語・年齢の条件 | カナダ永住権の条件と費用 |
| 投資で居住権 | ギリシャ・ポルトガル | ゴールデンビザ:ギリシャは不動産25万〜80万ユーロ、ポルトガルはファンド50万ユーロなど | ゴールデンビザとは |
| 国籍(パスポート) | バヌアツ | 政府への寄付13万ドル(約2,053万円)から。日本国籍は失う | バヌアツ市民権の費用と取得期間 |
「物価が安い国」「税金が安い国」だけで選ぶと、ビザの条件を満たせない、住んでから費用がかさむ、ということが起きます。まず目的を決め、その目的で使えるビザがある国の中から、生活費・治安・医療・税金を比べるのが失敗しにくい順番です。各国の永住権・市民権の費用は海外の永住権・市民権はいくらで取れるかでも一覧にしています。税金の面からの比較は税金が安い国ランキングで整理しています。
日本人が多く住む国(外務省の統計)
外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2025年10月1日時点で海外に住む日本人は1,298,170人で、そのうち永住者は588,486人でした。
| 順位 | 国 | 在留邦人数 | うち永住者 |
|---|---|---|---|
| 1 | アメリカ | 416,380人 | 233,475人 |
| 2 | オーストラリア | 105,566人 | 65,085人 |
| 3 | 中国 | 92,928人 | 6,577人 |
| 4 | カナダ | 75,316人 | 51,569人 |
| 5 | タイ | 72,113人 | 2,733人 |
| 6 | イギリス | 62,270人 | 29,955人 |
| 7 | ブラジル | 49,037人 | 44,461人 |
| 8 | ドイツ | 44,648人 | 19,026人 |
| 9 | 韓国 | 44,471人 | 17,229人 |
| 10 | フランス | 36,023人 | 15,662人 |
アメリカ・オーストラリア・カナダは永住者が多く、現地に根を下ろして暮らす人が多い国です。一方、タイは在留邦人の96%が長期滞在者で、永住者は3.8%にとどまります。タイは永住権を取りにくく、駐在員とその家族や、長期ビザの更新を続けて暮らす人が中心です。都市別では、ロサンゼルス都市圏(63,972人)、バンコク(51,297人)、ニューヨーク都市圏(38,251人)、シンガポール(33,397人)の順に多く住んでいます。
日本人が多い国には、日本語の通じる病院や日本食の店、日本人学校などがそろっていて、初めての海外生活でも暮らしやすい面があります。
年金・老後で移住するなら:タイ・マレーシア・ポルトガル・パナマ・ギリシャ
年金で暮らす人向けのビザがある国は、働かずに一定の年金や資産があれば長期滞在できます。
| 国 | ビザ | 条件 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| タイ | リタイアメントビザ | 50歳以上、預金80万バーツ(約376万円)か月6万5,000バーツ(約30.6万円)の収入 | 毎年の延長と90日ごとの届出。円安でバーツは5年で約1.4倍 |
| マレーシア | MM2H | シルバーは定期預金15万ドル(約2,369万円)と60万リンギ以上の不動産の購入(クアラルンプールなどは州の基準で100万リンギ以上) | 永住権ではなく長期滞在の許可 |
| ポルトガル | D7 | 月920ユーロ(約16.3万円)以上の年金・不労所得 | 優遇税制(NHR)は終了。国籍は居住10年に延長 |
| パナマ | ペンショナード | 生涯の年金が月1,000ドル(約15.8万円)以上 | 最初から永住。日本の年金は日本で20.42%源泉徴収 |
| ギリシャ | FIP | 月3,500ユーロ(約61.9万円)以上の年金・不労所得 | 外国の年金などの国外所得に一律7%の課税を選べる制度がある |
年金で移住するときに必ず確認したいのが、日本の年金にどの国で税金がかかるかです。日本と租税条約を結び、年金の条項がある国(ポルトガルなど)では、日本年金機構に届出を出すと日本の源泉徴収が免除され、移住先で課税されます。タイのように条約に一般の年金の条項がない国や、パナマのように条約がない国では、日本で20.42%の源泉徴収(65歳以上は月9万5,000円を超える部分に課税)がかかります。国ごとの扱いは年金で海外移住はできる?で一覧にしています。
働いて永住権を取るなら:オーストラリア・カナダ・ニュージーランド
現地で働きながら永住権を目指すなら、点数制の技術移民がある国が候補です。年齢・英語力・学歴・職歴・職業で点数がつき、条件を満たした人が招待されます。
- オーストラリア:招待の時点で45歳未満、英語Competent以上、職業リストの職業で技能審査に通り、ポイント65点以上。2026年6月の招待では建設系の職人が65点、看護師・教員が主に75点以上で招待されました。詳しくはオーストラリア永住権の職業リストで解説しています
- カナダ:Express Entryの点数で招待される仕組み。詳しくはカナダ永住権の条件と費用
- ニュージーランド:技能移民(SMC)の点数制。詳しくはニュージーランド永住権の条件と費用
どの国も、若く、英語ができ、需要のある職業の経験がある人ほど有利です。40代以降や英語に自信がない場合は、雇用主のスポンサーや、家族のビザなど別のルートを検討することになります。年齢や資金から候補の国を確かめるには永住権の取りやすさ診断も使えます。国ごとの永住権の取りやすさ(お金・年数・仕事の3つのルート)は日本人が永住権を取りやすい国で比べています。
投資で居住権や国籍を持つなら:ゴールデンビザとバヌアツ市民権
「すぐに住むわけではないが、海外に住める権利を持っておきたい」という人には、投資と引き換えに居住権を出すゴールデンビザがあります。
| 国 | 制度 | 主な条件 | 滞在義務 |
|---|---|---|---|
| ギリシャ | ゴールデンビザ | 不動産25万〜80万ユーロ(地域と物件で3段階。25万ユーロは商業物件の住宅への転用などに限る) | なし |
| ポルトガル | ゴールデンビザ | ファンド50万ユーロ(約8,844万円)、文化支援25万ユーロなど。不動産ルートは廃止 | 初年度7日、以後2年ごとに14日 |
| パナマ | 適格投資家 | 新築の不動産30万ドル(約4,739万円)、中古は50万ドルなど | 永住権の維持は2年に1度の入国 |
国籍(パスポート)そのものを取る制度もあります。バヌアツは、政府への寄付(単身13万ドル(約2,053万円))で国籍を取得でき、申請から約3〜4か月で取得できます。ただし、日本は二重国籍を認めていないため、外国の国籍を自分の意思で取ると日本国籍を失います。国籍を取るかどうかは、二重国籍を認めている国一覧で日本国籍への影響を確認してから判断してください。バヌアツの治安・物価・税金など現地の暮らしはバヌアツ移住の治安・物価・税金・ビザで解説しています。
子どもの教育で選ぶなら:マレーシア・シンガポール・オーストラリア
子どもの教育を目的にした「教育移住」では、英語で学べるインターナショナルスクールの費用と、親が取れるビザの組み合わせで国を選びます。
- マレーシア:インターナショナルスクールの選択肢が多く、同じ学年でも学校によって学費が3倍ほど違います。親のビザはMM2Hや就労パスが中心です。詳しくはマレーシア移住の条件と費用
- シンガポール:教育の水準は高い一方、住居費と学費が高く、親の在留資格(就労パスなど)が前提です。詳しくはシンガポール移住と永住権の条件
- オーストラリア:親が技術移民などで永住権を取れれば、子どもは現地の公立学校に通えます
教育移住では、子どもの年齢が上がるほど日本の受験や進学との両立が難しくなります。何年住むか、日本に戻るかを先に決めておくと、学校選びがぶれにくくなります。6か国の学費と親のビザの比較は教育移住におすすめの国にまとめています。
海外移住は「やめとけ」と言われる7つの理由
海外移住が「やめとけ」と言われるのは、次のような問題が移住してから表に出るためです。どれも事前に数字で確認できます。
| 理由 | 何が起きるか | 事前の対策 |
|---|---|---|
| 1. 円安 | 円で年金や資産を持っていると、現地通貨での生活費が上がる。タイのバーツは5年で円に対して約1.4倍 | 生活費を現地通貨で見積もり、為替に余裕を持つ |
| 2. 年金の税金 | 国によっては日本で20.42%の源泉徴収(月5万円、65歳以上は9万5,000円の控除を超える部分)が続き、移住先でも課税され得る | 移住先と日本の租税条約を確認する |
| 3. 医療保険 | 高齢になると民間の医療保険に入りにくく、保険料も高い | 加入できる年齢のうちに入る |
| 4. ビザの更新 | 長期滞在ビザは更新が続き、条件が変わることもある | 永住権が取れる国か、更新の条件を確認する |
| 5. 日本国籍 | 外国の国籍を取ると日本国籍を失う | 永住権で止めるか、国籍まで取るかを先に決める |
| 6. 出国税と日本の税金 | 1億円以上の有価証券等を持ち、過去10年で5年を超えて日本に住んでいた人は、出国時に含み益に課税される | 出国の前に税理士に相談する |
| 7. 言葉と孤立 | 役所・病院・賃貸の手続きで現地語が必要になる。家族や友人と離れる | 日本人の多い都市を選ぶ、現地の専門家を確保する |
国別のデメリットは、ポルトガル移住のデメリットと後悔する理由、タイ移住で後悔・悲惨になる理由、パナマ移住の治安と生活費で数字とともに解説しています。
移住前にやること:税金・住民票・日本の書類
海外移住では、移住先のビザだけでなく、日本側の手続きも欠かせません。
- 住民票と税金:1年以上海外に住む予定なら、原則として住民票を抜く(海外転出届)。日本の非居住者になると、日本の所得税や住民税の扱いが変わります。詳しくは海外移住の税金と住民票
- 年金と健康保険:国民年金の任意加入、日本の年金の受け取り方法、日本の健康保険を抜けた後の医療の備えを決める
- 銀行口座:日本の口座を残すか、海外の口座を作るかを決める。日本の銀行・証券口座・NISAの扱いは海外移住したら日本の銀行口座はどうなる?、海外口座の作り方は海外口座の作り方
- 日本の書類:多くの国のビザ申請で、戸籍謄本や警察証明書(犯罪経歴証明書)の英訳と、外務省のアポスティーユ(公的書類の証明)が必要です
よくある質問
日本人に一番おすすめの移住先はどこですか?
移住の目的によって変わります。年金で暮らすならタイ・マレーシア・ポルトガル・パナマ、働いて永住権を取るならオーストラリア・カナダ・ニュージーランド、投資で居住権を持つならギリシャやポルトガルのゴールデンビザが候補です。日本人が最も多く住んでいるのはアメリカで、次いでオーストラリア、中国です。
海外移住にはいくらあれば足りますか?
国とビザで大きく変わります。タイのリタイアメントビザは預金80万バーツ(約376万円)から、ポルトガルのD7は月920ユーロ(約16.3万円)以上の年金・不労所得が条件です。ただし、これはビザの審査の基準で、実際の生活費には家賃・医療保険・税金・一時帰国の費用を加える必要があります。
永住権が取りやすい国はどこですか?
年金や投資で最初から永住権が出る制度がある国としては、パナマ(ペンショナード・適格投資家)があります。オーストラリアやカナダは点数制の技術移民で、招待されれば最初から永住権になり、若く英語ができ、需要のある職業の人には取りやすい国です。タイのように、退職を理由とした永住権の区分がない国もあります。
女性一人や老後の一人暮らしでも移住できますか?
できます。ビザの条件に性別や家族の有無は関係ありません。治安の面では、日本人が多く住む都市や地区を選ぶ、夜間の移動に注意するなど、国ごとの危険情報を外務省の海外安全ホームページで確認してください。
海外移住すると日本の年金はもらえなくなりますか?
もらえます。日本の年金は海外に住んでいても受け取れます。ただし、受け取り方と税金の扱いが国によって違うため、移住前に確認が必要です。
まとめ
- 海外移住のおすすめの国は、年金・就労・投資・教育など、移住の目的で決まる
- 日本人が多く住むのはアメリカ・オーストラリア・中国・カナダ・タイ(2025年10月1日時点)
- 年金ならタイ・マレーシア・ポルトガル・パナマ、就労ならオーストラリア・カナダ・ニュージーランド、投資ならゴールデンビザ
- 「やめとけ」と言われる理由は、円安・年金の税金・医療保険・ビザの更新・日本国籍・出国税・言葉。どれも事前に確認できる
- 移住先のビザと合わせて、住民票・税金・年金・日本の書類の手続きを準備する
当事務所では、各国の永住権・長期滞在ビザ・市民権の比較相談と、申請に必要な日本の書類の翻訳・アポスティーユ取得に対応しています。どの国が目的に合うか、年金や資産、家族構成をもとに整理したい方は、無料相談をご利用ください。しつこい営業は一切いたしません。
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関連記事:海外の永住権・市民権はいくらで取れるか/年金で海外移住はできる?/海外移住の税金と住民票
参考(一次情報・出典)
- 外務省:海外在留邦人数調査統計(2025年10月1日時点)
- 外務省:海外在留邦人数調査統計の公表(2025年12月25日)
- 日本年金機構:海外に転出するとき
- 国税庁:非居住者に支払う公的年金の源泉徴収
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング:2026年10月8日の為替相場
- 各国の制度の出典は、本文中にリンクした各国の記事に掲載しています
本記事の金額・制度は2026年10月9日時点の情報です。円換算は1ドル=157.95円、1ユーロ=176.87円、1豪ドル=109.89円、1バーツ=4.70円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2026年10月8日の仲値)。


