税金が安い国ランキング【2026年】所得税・法人税・相続税で比較

税金が安い国は、何の税金で比べるかで答えが変わります。個人の所得税がない国はUAE(ドバイ)・バハマ・ケイマン諸島・カタール・モナコなど、国外の所得に課税しない国はパナマ・香港・ジョージアなど、税率が一律で低い国はブルガリア(10%)・ハンガリー(15%)などです。法人税は、バハマ・ケイマン諸島が0%、UAE・ハンガリーが9%、ブルガリア・パラグアイが10%です。一方、日本は所得税と住民税を合わせた最高税率が約55.9%、税と社会保険料の合計が国民所得に占める割合(国民負担率)は45.7%(2026年度見通し)です。

ただし、移住先の税金が安くても、日本の税金がすべてなくなるわけではありません。日本の会社から受け取る役員報酬、日本の不動産の家賃、出国時の出国税、相続税、海外に作った会社への外国子会社合算税制などは、移住後も日本で課税される場合があります。本記事では、PwC Worldwide Tax Summaries・各国政府・国税庁・財務省の公表情報にもとづき、次の点を整理します。

  • 税金が安い国の4つの型と、日本との比較
  • 所得税がない国、国外の所得に課税しない国、税率が低い国、新しく住む人向けの優遇がある国
  • 法人税が安い国のランキングと、大企業向けの最低税率15%
  • 移住しても日本の税金が残る条件(役員報酬・不動産・住民税・出国税・相続税・外国子会社合算税制・租税条約)

※本記事は2026年10月16日時点の公表情報(PwC Worldwide Tax Summaries、各国政府、国税庁、財務省、総務省など)をもとにした一般的な解説です。税率は主に個人の最高税率・法人の標準税率で、各国の税制は改正されることがあります。実際の税額や居住者の判定は個々の事情によって変わるため、申告・納税の判断は税務署または税理士へご確認ください。円換算は三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2026年10月15日の仲値(1米ドル=157.99円、1ユーロ=176.87円、1スイスフラン=190.14円、1香港ドル=20.13円、1シンガポールドル=123.12円、1UAEディルハム=43.10円、1タイ・バーツ=4.72円、1フィリピン・ペソ=2.53円)によります。マレーシア・リンギット、オマーン・リアル、ジョージア・ラリは同社の公表対象外のため円換算していません。

目次

  1. 結論:税金が安い国は4つの型に分かれる
  2. 所得税がない国
  3. 国外の所得に課税しない国
  4. 税率が低い国と、新しく住む人向けの優遇がある国
  5. 法人税が安い国ランキング
  6. 日本の税負担はどのくらいか
  7. 移住しても日本の税金が残る条件
  8. 会社や資産を海外に移すときの注意:外国子会社合算税制と租税条約
  9. よくある質問
  10. まとめ:移住先の税率より先に、日本に残る税金を確認する

結論:税金が安い国は4つの型に分かれる

「税金が安い国」は、何の税金が安いかで次の4つの型に分けると比べやすくなります。

税金が安い国の4つの型(2026年10月時点)
型主な国・地域特徴
① 所得税がない国UAE、バーレーン、カタール、クウェート、バハマ、ケイマン諸島、バミューダ、ブルネイ、モナコ、バヌアツ給与・投資の利益に個人の所得税がかからない。その分、VATや手数料、住居費が高い国が多い
② 国外の所得に課税しない国パナマ、パラグアイ、コスタリカ、香港、ジョージア、シンガポール(国外所得は原則非課税)、マレーシア(2036年まで条件付き非課税)国内の所得には課税するが、国外で得た所得には課税しない(領土内課税)
③ 税率が低い国ブルガリア(一律10%)、ハンガリー(一律15%)、エストニア(22%)国内外の所得に課税する国でも、税率そのものが低い(ジョージア・パラグアイは税率が低く、国外所得にも課税しない)
④ 新しく住む人向けの優遇がある国イタリア、ギリシャ、ポルトガル、マルタ、キプロス、スイス通常の税率は高いが、移住してきた人には国外所得の定額課税などの特別な制度がある

所得税が安い国ランキング

個人の所得税の最高税率が低い順に並べると、次のとおりです。

個人の所得税の最高税率と相続税の有無(主な国・地域、2026年10月時点)
順位・最高税率国・地域国外所得相続税
1位 0%UAE、バハマ、ケイマン諸島、カタール、モナコ、バヌアツ—なし(モナコは配偶者・直系以外にあり)
2位 10%ブルガリア、パラグアイブルガリアは課税、パラグアイは非課税ブルガリアはあり(配偶者・直系は非課税、ほかも低率)、パラグアイはなし
3位 15%ハンガリー課税あり(直系・配偶者・兄弟姉妹は非課税)
4位 15〜17%香港非課税なし
5位 20%ジョージア非課税なし
6位 22%エストニア課税なし
7位 24%シンガポール原則非課税なし
8位 25%パナマ、コスタリカ非課税なし
9位 30%マレーシア2036年まで条件付き非課税なし
10位 35%タイ、フィリピン、キプロス、マルタ国により異なるタイ・フィリピンはあり
参考 約55.9%日本(所得税45%+復興特別所得税+住民税10%)課税あり(最高55%)

ただし、日本の非居住者になれるかどうかは、移住先の税率ではなく生活の本拠がどこにあるかで決まり、非居住者になっても日本に残る税金があります(移住しても日本の税金が残る条件の章)。税金が安い国を選ぶときは、移住先の税制と、日本に残る税金の両方を確認する必要があります。出国前後の手続きの全体は海外移住の税金と住民票の手続きで整理しています。

所得税がない国

次の国・地域には、個人の給与や投資の利益にかかる所得税がありません(PwC Worldwide Tax Summaries の各国ページ、モナコ・バヌアツは各国政府のページで確認)。

個人の所得税がない主な国・地域
国・地域法人税VAT(付加価値税)相続税注意点
UAE(ドバイなど)課税所得37万5,000ディルハム(約1,616万円)超に9%(フリーゾーンの条件を満たす会社の対象所得は0%)5%なし税務上の居住者は「12か月で183日以上の滞在」などで判定
バーレーン一般の法人税なし(石油・ガスは46%)10%なし大規模な多国籍企業には2025年から15%の最低税率。売上100万バーレーン・ディナール超などの会社に10%の法人税案(2027年からの見込み、議会の承認待ち)
カタール10%(外国資本の持分)なしなしカタール国内で生じた一定の所得には課税あり
クウェート15%(外国法人)なしなし—
サウジアラビア20%(外国資本の持分)15%なし給与だけの個人は非課税
オマーン15%5%なし2028年1月1日から個人所得税を導入(年4万2,000オマーン・リアル超の部分に5%)
バハマなし(大規模な多国籍企業には最低税率15%)10%なし—
ケイマン諸島なしなしなし不動産の移転に印紙税
バミューダ原則なし(大規模な多国籍企業は2025年から15%)なしなし雇用主に給与税
ブルネイ18.5%なしなし—
モナコ25%(売上の25%超を国外で得る商工業の会社)フランスと同じ(標準税率20%)あり(配偶者・直系以外)フランス国籍の人には所得税の例外がある
バヌアツなし15%なし政府の投資促進庁の案内による(2022年更新)

所得税がない国でも、生活のコストは低くありません。UAEは家賃や学費が高く、モナコ・ケイマン諸島・バミューダは住居費が世界でも高い水準です。また、中東の国では遺産の分け方がイスラム法にもとづく場合があり、相続の準備が別に必要です。ドバイの税制と日本側で残る税金はドバイ(UAE)に税金はない?、ビザの取り方はドバイ移住の条件と費用で詳しく解説しています。

国外の所得に課税しない国

国内で得た所得には課税し、国外で得た所得には課税しない国もあります(領土内課税)。海外の投資など、移住先の国外で生じる収入が中心の人にとっては、所得税がない国に近い効果があります(日本で生じる家賃・配当などは日本で課税されます)。

国外の所得に課税しない(または条件付きで非課税の)主な国・地域
国・地域国内所得の最高税率国外所得の扱い居住者の判定・その他
パナマ25%(5万ドル(約790万円)超の部分)課税しない183日超の滞在。株式の譲渡益は10%
パラグアイ10%課税しない(ただし、パラグアイの納税者(法人・個人)に国外から提供した役務の報酬はパラグアイの所得とされる)年120日超の滞在
コスタリカ25%課税しない183日超の滞在
香港累進で最高17%。ただし人的控除(基本控除など)を差し引く前の純所得×15%(500万香港ドル(約1億65万円)超の部分は16%)が上限課税しない株式の譲渡益・配当・預金利子は個人に非課税
ジョージア一律20%課税しない12か月で183日以上の滞在
シンガポール24%(100万シンガポールドル(約1億2,312万円)超の部分)個人が受け取る国外所得は原則非課税(パートナーシップ経由を除く)株式の譲渡益は非課税
マレーシア30%(200万リンギット超の部分)2036年12月31日までに国内で受け取る国外所得は条件付きで非課税暦年で182日以上の滞在
フィリピン35%(800万ペソ(約2,024万円)超の部分)外国人は居住者でも国内の所得だけに課税フィリピン国民の居住者は全世界の所得に課税
タイ35%(500万バーツ(約2,360万円)超の部分)2024年以後に得た国外所得は、タイに送金した年に課税暦年で180日以上の滞在。長期居住ビザ(LTRビザ)の富裕層・年金受給者・リモートワーカー枠は国外所得が非課税

注意したいのは、「国外の所得」にどこまで含まれるかが国ごとに違うことです。特に、移住先に住みながらリモートで行った仕事の報酬は、支払元が日本の会社や取引先でも、多くの国で移住先の国内の所得として課税されます。国外の所得に課税しない国でも、日本の仕事を現地で続ける人の税金がゼロになるわけではありません(ジョージアには、売上50万ラリ未満の個人事業主に売上の1%で課税する小規模事業者の制度があります)。パラグアイは国内の事業者に対して国外で提供した役務の報酬を国内の所得とみなし、タイは送金しなければ課税されませんが送金した年に課税されます。マレーシアの国外所得の非課税は期限つきです。移住先で働く、事業をする、年金を受け取る、といった収入の種類ごとに、課税されるかを確認する必要があります。年金の受け取り方は年金で海外移住はできる?で解説しています。

税率が低い国と、新しく住む人向けの優遇がある国

所得税の税率が一律で低い国

国内外の所得に課税する国でも、税率そのものが低い国があります。ブルガリアは一律10%(EU・EEAの規制市場で売却した株式の譲渡益は非課税、配当は5%)、ハンガリーは一律15%(ただし相続税・贈与税は18%(住宅用不動産は9%)で、直系の親族・配偶者・兄弟姉妹は非課税)、エストニアは22%です。ジョージアは一律20%で、国外の所得には課税しません。

新しく住む人向けの優遇がある国

通常の税率は高くても、移住してきた人に国外所得の定額課税などの制度を用意している国があります。

新しく住む人向けの主な優遇制度(2026年10月時点)
国制度主な内容と条件
イタリア国外所得の定額課税2026年以後に移住する人は国外所得に年30万ユーロ(約5,306万円)、家族は1人5万ユーロ(約884万円)。移住前10年のうち9年はイタリアの非居住者であること。通常の所得税は最高43%
ギリシャノンドム制度(国外から移ってきた人向けの制度)国外所得に年10万ユーロ(約1,769万円)の定額課税(家族は1人2万ユーロ(約354万円))、最長15年。50万ユーロ(約8,844万円)以上の投資と、過去8年のうち7年は非居住者であることが条件。年金受給者は国外所得に7%の制度もある
ポルトガルIFICI(いわゆるNHR 2.0)対象の活動(高等教育・研究、対象業種の高度専門職、スタートアップなど)に就くことが前提で、その活動による給与・事業所得に一律20%、国外所得は原則非課税(年金などを除く)、10年間。過去5年ポルトガルの居住者でないこと。対象外の仕事は通常の税率。通常の所得税は最高48%
マルタ送金課税・グローバル・レジデンス・プログラムマルタに住所がない居住者は、国内所得と送金した国外所得に課税。プログラムは送金した国外所得に15%・最低税額1万5,000ユーロ(約265万円)で、2027年から最低税額3万5,000ユーロ(約619万円)の新制度へ(2026年末までの申請は2031年まで現行のまま)
キプロスノンドム制度キプロスに住所(ドミサイル)がない人は、配当・利子にかかる国防特別税が免除(過去20年のうち17年住むまで)。株式の譲渡益は原則非課税。所得税は最高35%
スイス支出にもとづく定額課税スイス国籍がなく、スイスで働かない人が対象。連邦の最低課税ベースは年43万4,700スイスフラン(約8,265万円)または家賃の7倍など。チューリッヒ州などこの制度がない州もある

これらの制度は、国外の所得が多い富裕層には有利ですが、日本で役員報酬や家賃を受け取る人にとっては、日本側の課税が残る点は変わりません。投資による居住権(ゴールデンビザ)と組み合わせて検討されることが多く、制度の比較はゴールデンビザとはで整理しています。

法人税が安い国ランキング

法人税(会社の利益にかかる税)の標準税率が低い主な国・地域は次のとおりです。

法人税の標準税率が低い主な国・地域(2026年10月時点)
税率国・地域補足
0%バハマ、ケイマン諸島、バヌアツバハマは大規模な多国籍企業向けの最低税率15%を導入。ケイマン諸島は導入していない
0%(大企業は15%)バミューダ年間売上7.5億ユーロ(約1,327億円)以上の多国籍企業グループは2025年から15%
0%(留保利益)エストニア、ジョージア利益を分配したときに課税(エストニア22%、ジョージア15%)。社内に留めた利益は非課税
0%/9%UAE課税所得37万5,000ディルハムまで0%、超える部分9%。適格フリーゾーン法人の適格所得は0%
9%ハンガリー地方事業税(最高2%)が別にかかる
10%ブルガリア、パラグアイ、カタール(外国資本の持分)—
12.5%アイルランド事業所得。事業以外の所得は25%
15%キプロス(2026年から。2025年までは12.5%)、クウェート(外国法人)、オマーン—
8.25%/16.5%香港最初の200万香港ドル(約4,026万円)まで8.25%
17%シンガポール—
29.74%日本(法人実効税率)防衛特別法人税の対象になる会社は30.64%(2026年4月以後に始まる事業年度)

ただし、年間売上7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループには、実効税率15%を下回る部分を追加で課税する最低税率の制度(グローバル・ミニマム課税)が各国で始まっています。UAE・香港・シンガポール・カタールなどは2025年から適用しています。日本は2024年4月以後に始まる会計年度から所得合算ルールを、2026年4月1日以後に始まる会計年度から国内ミニマム課税を適用しています。中小企業やオーナー会社には直接は関係しませんが、日本の会社や個人が税率の低い国に会社を作ると、日本の外国子会社合算税制の対象になることがあります(会社や資産を海外に移すときの注意の章)。

日本の税負担はどのくらいか

比較の基準として、日本の主な税率と負担の水準をまとめると次のとおりです。

日本の主な税率と負担の水準(2026年10月時点)
項目水準出典
個人の最高税率所得税45%(課税所得4,000万円超)+復興特別所得税(所得税額の2.1%)+住民税10%=約55.9%国税庁 No.2260、総務省
上場株の譲渡益・配当20.315%(所得税15.315%+住民税5%)国税庁 No.1463
極めて高い所得への追加課税2025・2026年分は(基準所得金額−3.3億円)×22.5%が基準所得税額を超える部分。2027年分から1.65億円・30%に強化国税庁 No.2270、財務省(令和8年度税制改正)
法人実効税率29.74%(防衛特別法人税の対象は30.64%)財務省(2026年1月現在)
消費税10%(軽減税率8%)財務省
相続税・贈与税最高55%国税庁 No.4155
国民負担率45.7%(租税負担率28.0%+社会保障負担率17.6%、2026年度見通し。端数処理のため内訳の合計とは一致しない)財務省(2026年3月5日)

2027年1月からは、復興特別所得税が1.1%に下がる代わりに防衛特別所得税1%が加わるため、所得税の最高税率(45.945%)は変わりません。極めて高い所得への追加課税は、株式の譲渡益が大きい人ほど影響を受ける制度で、ミニマムタックス強化と出国税の解説でも取り上げています。

国際的な比較では、米国の研究機関タックス・ファウンデーションの「国際税制競争力指数2025」で、日本はOECD加盟38か国中22位、1位は12年連続でエストニアでした。この指数は税率の低さだけでなく、制度の簡素さや中立性も評価しているため、「税金が安い国の順位」とは一致しません。

移住しても日本の税金が残る条件

日本の非居住者になれるか:生活の本拠で判断

日本の居住者は「国内に住所を有し、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人」で、住所は生活の本拠をいい、客観的な事実で判断されます(国税庁 No.2875)。国外で継続して1年以上住むことを通常必要とする仕事に就くために出国した場合や、外国籍または外国の永住許可があり、日本に生計を一にする家族がいないなど日本に戻ると推測される事実がない場合は、日本に住所がない人と推定されます(国税庁 No.2875 別紙)。仕事を伴わない移住では、家族の住まい、資産、住居などの事実から判断されます。日本の判定基準に「183日」という日数はありません。

非居住者でも日本で課税される所得

  • 日本の会社の役員報酬:日本の会社(内国法人)の役員として海外で仕事をしても、その報酬は日本国内で生じた所得とされ、20.42%が源泉徴収されます(国税庁 No.1929。使用人として常時海外で勤務する場合などを除く)
  • 日本の不動産の家賃:20.42%の源泉徴収(個人が自分や親族の住まいとして借りる場合を除く)。原則として確定申告が必要で、日本で申告・納税を代わりに行う納税管理人の届出も必要です(国税庁 No.2884、No.1926)
  • 日本の会社の配当:上場株は15.315%(発行済株式の3%以上を持つ大口株主と非上場株は20.42%)の源泉徴収。租税条約で軽減される場合があります
  • 著作権などの使用料:日本の会社から受け取る著作権の使用料や譲渡の対価にあたるもの(デザイン・原稿の利用料など)は、20.42%の源泉徴収(租税条約で軽減される場合あり)。海外で行った作業の対価そのものは、原則として日本では課税されません

住民税は1月1日の住所で決まる

住民税は1月1日に住所がある市区町村で、前年の所得に課税されます(総務省)。年の途中で出国しても、その年度の住民税はかかります。逆に、1年以上の予定で12月31日までに国外転出し、1月1日に日本に住所がなければ、翌年度の住民税はかかりません。

出国税(国外転出時課税)

出国のときに株式・投資信託などの有価証券(未決済のデリバティブ取引などを含む)を合計1億円以上持ち、出国前10年以内に日本に住所または居所があった期間が5年を超える人は、出国時に売却したものとみなして含み益に課税されます(国税庁 No.1478)。税率は株式の譲渡所得と同じ15.315%で、たとえば含み益(時価−取得費)が10億円なら所得税等は約1.5億円です(2026年中の出国の場合)。2027年以後の出国では、極めて高い所得への追加課税(1.65億円・30%)が加わり、負担がさらに増える場合があります。出国前の納税管理人の届出、確定申告書への記載、担保の提供、毎年の継続適用届出書の提出などを条件に、5年(延長して最長10年)猶予できます。暗号資産は対象の資産に含まれませんが、日本の居住者の間は雑所得として最高約55.9%で課税されます。海外に住む家族へ有価証券を贈与・相続した場合にも、同じような課税があります。

相続税は10年のルール

相続人が日本国籍なら、被相続人か相続人のどちらかが過去10年以内に日本に住所を持っていれば、国外財産にも日本の相続税がかかります。相続人が外国籍でも、被相続人が日本国籍で過去10年以内に日本に住所を持っていれば同じです(贈与税も同様)。相続税がない国の一覧と条件は相続税がない国一覧と10年ルールで解説しています。

会社や資産を海外に移すときの注意:外国子会社合算税制と租税条約

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)

日本の居住者や日本の会社が、税金の安い国に作った会社に利益をためると、その利益を日本の株主の所得に合算して課税する制度があります(財務省「外国子会社合算税制の概要」)。

  • 対象になる外国の会社:日本の居住者・日本の会社などが、合わせて50%を超える株式を直接・間接に持っている外国の会社
  • 合算される株主:その会社の株式を直接・間接に10%以上持つ日本の会社・居住者など
  • 適用が免除される基準:外国の会社が実際に負担する税の割合(租税負担割合)が20%以上(実体のないペーパー・カンパニーなどは27%以上)。また、事業の実体などの経済活動基準を満たせば、会社全体の合算はされない(配当・利子などの受動的所得は合算の対象)

この制度は日本の居住者・日本の会社に課税するものなので、本当に日本の非居住者になった本人には直接はかかりません。ただし、移住や海外の会社の実体が乏しい場合は、居住者と判定されたり、取引が否認されたりするおそれがあります。ただし、①日本の会社を通じて海外の会社を持っている場合はその日本の会社に、②日本に残った家族などが株式を持っている場合はその家族に、③生活の本拠が日本に残り居住者のままと判断された場合は本人に、課税されることがあります。50%超の判定には移住した本人など日本の居住者と特殊な関係にある非居住者の持分も含まれ、日本に残った家族の持分が小さくても、同族株主のグループで10%以上なら対象になり得ます。法人税0%や9%の国に会社を作る場合は、事前に税理士に確認してください。

移住後に日本の株式を売るとき

一方、非居住者が日本の株式を売った利益は、原則として日本では課税されません。ただし、本人と親族・関係会社などを合わせて発行済株式の25%以上を(その年以前3年以内に)持つ株主が、その年に5%以上を売る場合(事業譲渡類似)や、資産の50%以上が日本の土地等である会社の株式で、本人と関係者の持株が上場株は5%超・非上場株は2%超の場合などは日本で課税されます(租税条約で扱いが変わる場合があります)。会社のオーナーが移住後に自社株を売るときは、事前の確認が必要です。

日本との租税条約の有無

租税条約は、日本と相手国で二重に課税されることを防ぎ、税務当局の間で情報を交換するための条約です。財務省の一覧(2026年6月26日現在)による主な国の状況は次のとおりです。

主な国・地域と日本の租税条約(財務省、2026年6月26日現在)
区分国・地域
租税条約ありUAE、シンガポール、香港、マレーシア、タイ、フィリピン、ポルトガル、ジョージア、ブルガリア、ハンガリー、カタール、クウェート、サウジアラビア、オマーン、ブルネイ
情報交換協定のみパナマ、バハマ、ケイマン諸島、バミューダ
二国間の条約・協定なし(多国間の税務行政執行共助条約のみ)パラグアイ、マルタ、キプロス、バヌアツ、モナコ、バーレーン、コスタリカ、ドミニカ国、ナウル

租税条約がない国では、日本で源泉徴収される配当・利子・使用料の税率が条約で下がることはありません(役員報酬は、条約がある国でも日本で20.42%が源泉徴収されます)。一方で、多くの国・地域が税務当局の間で金融口座の情報を自動的に交換する仕組み(CRS)に参加しており、日本の居住者が海外に持つ口座の情報は日本の税務当局に届きます(非居住者になった後は、原則として移住先の国の当局に報告されます)。

よくある質問

世界で一番税金が安い国はどこですか?

個人の所得税・法人税・VAT・相続税のすべてがない国・地域は、ケイマン諸島が代表的です。ただし、住居費などの生活のコストは高く、日本人が住むためのビザの条件も国ごとに違います(日本人が永住権を取りやすい国)。所得税だけならUAEやバハマ、国外の所得への課税だけならパナマや香港も候補になり、「一番」は何の税金で比べるかによって変わります。

所得税がない国に移住すれば、日本の税金はゼロになりますか?

なりません。生活の本拠が日本に残っていれば日本の居住者のままで、全世界の所得に日本の税金がかかります。非居住者になっても、日本の会社の役員報酬、日本の不動産の家賃、日本の上場株の配当には日本の税金がかかり、出国の年度の住民税、出国税、相続税の10年のルールも残ります。

海外に住んで日本の会社から役員報酬を受け取るとどうなりますか?

日本の会社の役員報酬は、海外で仕事をしても日本国内で生じた所得とされ、20.42%が源泉徴収されます。UAEのように所得税がない国に住んでいても、日本での源泉徴収はなくなりません。

法人税0%の国に会社を作れば節税になりますか?

日本の居住者や日本の会社がその会社の株式の50%超を持っていると、外国子会社合算税制で利益が日本の株主の所得に合算されることがあります。日本に住んだまま、または日本の会社を通じて海外の会社を持つ場合は、海外の会社の利益に日本の税金がかかり、法人税の低さが打ち消される仕組みです。

海外に183日以上いれば、日本の非居住者になれますか?

183日は日本の居住者の判定基準ではありません。日本では、住所(生活の本拠)があるか、1年以上居所があるかで判断します。183日以上海外にいても、家族や仕事の拠点が日本にあれば居住者とされることがあります。なお、移住先の国の居住者の判定には183日を基準にする国が多くあります(タイは180日、パラグアイは120日超)。

年金で暮らす人に税金が安い国はどこですか?

タイの長期居住ビザ(LTRビザ)の年金受給者枠は国外の所得が非課税ですが、50歳以上で年金などの所得が年8万ドル(約1,264万円)以上(4万〜8万ドルなら25万ドル以上の投資など)が条件です。マレーシアは国内で受け取る国外所得が2036年まで条件付きで非課税、ギリシャには年金受給者の国外所得に7%の制度があります。日本の公的年金は、非居住者でも一定の控除の後に20.42%が源泉徴収されます。ただし、年金は居住地国だけが課税すると定めた租税条約がある国では、届出をすれば日本の源泉徴収が免除されます(タイなど、条約に年金の条項がない国は対象外)。年金が中心の人は日本での税負担がもともと大きくないことが多いため、税率よりも物価・医療・ビザの条件で国を選ぶほうが現実的です(年金で海外移住はできる?)。

まとめ:移住先の税率より先に、日本に残る税金を確認する

税金が安い国は、所得税がない国(UAE・バハマ・ケイマン諸島など)、国外の所得に課税しない国(パナマ・香港・ジョージアなど)、税率が低い国(ブルガリア・ハンガリーなど)、新しく住む人向けの優遇がある国(イタリア・ギリシャ・ポルトガルなど)の4つの型に分かれます。一方で、日本の非居住者になれるかは生活の本拠で決まり、非居住者になっても日本の会社の役員報酬・日本の不動産の家賃・住民税・出国税・相続税・外国子会社合算税制は残ることがあります。収入と資産の内訳を整理し、日本に残る税金を確認したうえで、ビザの取りやすさや生活費とあわせて移住先を比べてください。

目的別:日本人が検討しやすい国

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税理士に相談する前に整理しておくこと

  • 収入の種類と支払元(役員報酬、家賃、配当、使用料、事業の売上、年金)
  • 資産の内訳と含み益(自社株、上場株、不動産、海外の口座・会社)
  • 家族それぞれの住む予定の国と、出国の予定日
  • 移住先で働くか、日本の仕事を続けるか

当事務所は海外移住・永住権・市民権取得のご相談を承っています。移住先の候補の比較と、ビザ・永住権・市民権の取り方の整理についてご相談いただけます(税務申告や税額の判断は税理士の領域のため行っていません)。マルタ・パナマ・バヌアツ・ドミニカ国・ナウルなどの永住権・市民権の申請をサポートしています。移住先のビザ申請で求められる戸籍謄本などの英訳、アポスティーユ・公証などの認証手続き、海外からの戸籍謄本の取り寄せも当事務所で対応しています。

参考(一次情報・出典)

本記事の税率・制度は2026年10月16日時点の公表情報にもとづきます(PwC Worldwide Tax Summaries の各国ページは2026年2〜10月に見直されたもの)。円換算は三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2026年10月15日の仲値(1米ドル=157.99円、1ユーロ=176.87円、1スイスフラン=190.14円、1香港ドル=20.13円、1シンガポールドル=123.12円、1UAEディルハム=43.10円、1タイ・バーツ=4.72円、1フィリピン・ペソ=2.53円)によります。マレーシア・リンギット、オマーン・リアル、ジョージア・ラリは同社の公表対象外のため、円換算していません。

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