
日本は二重国籍を原則として認めていません。日本人が外国に帰化したり、投資で外国の市民権を取ったりと自分の意思で外国籍を取得すると、その時点で日本国籍を自動的に失います(国籍法第11条第1項)。相手の国が二重国籍を認めているかどうかは関係ありません。一方、国際結婚の子どもや、アメリカなど出生地で国籍が決まる国で生まれた子どもは、生まれつき二重国籍になることがあり、こちらは日本国籍を失わず、原則20歳までに国籍を選ぶルールです(国外で生まれた子は、出生から3か月以内の国籍留保の届出が前提)。本記事では、法務省・e-Gov法令検索・各国政府の公表情報にもとづき、次の点を整理します。
- 二重国籍を認めている国・認めていない国の一覧(主要36か国)
- 日本人が外国籍を取ると日本国籍はどうなるか(国籍法11条・国籍喪失届・パスポート)
- 市民権投資・ゴールデンビザ・永住権と日本国籍の関係
- 生まれつきなどで重国籍になった人の国籍選択(期限・方法・選ばなかった場合)
- 日本国籍を失った後に日本で暮らす方法(在留資格・元日本人の帰化)
※本記事は2026年10月1日時点の国籍法・戸籍法・旅券法(e-Gov法令検索)、法務省「国籍Q&A」、出入国在留管理庁、在外公館、各国政府の公表情報をもとにした一般的な解説です。外国の国籍法の解釈は現地の弁護士に、個別の国籍の有無の判断は法務局にご確認ください。本記事は特定の国の市民権取得を勧誘するものではありません。
目次
結論:日本は二重国籍を原則認めない。自分で外国籍を取ると日本国籍を失う
「二重国籍」には、生まれつき2つの国籍を持つ場合と、日本人が後から外国籍を取る場合の2種類があり、日本の国籍法での扱いがまったく違います。
| ケース | 日本国籍はどうなるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 日本人が自分の意思で外国籍を取得(帰化、市民権投資など) | 取得した時点で自動的に失う。相手国が二重国籍を認めていても同じ | 国籍法第11条第1項 |
| 国際結婚・外国での出生・婚姻による自動付与などで重国籍になった | 直ちには失わない。期限までに国籍を選ぶ(重国籍になったのが18歳未満なら20歳まで、18歳以上なら2年以内) | 国籍法第14条 |
| (上の行のうち)国外で生まれた子 | まず出生から3か月以内に出生届とあわせて「国籍留保」の届出が必要。しないと出生時にさかのぼって失う | 国籍法第12条、戸籍法第104条 |
| 外国の永住権・ゴールデンビザ・長期滞在ビザを取得 | 影響なし(国籍ではなく居住許可のため) | ― |
つまり、日本人が「二重国籍になれる国」を探しても、日本側の法律で日本国籍を失うため、成人した日本人が新たに二重国籍になる方法は原則としてありません。海外に住む権利が欲しいだけなら、国籍ではなく永住権やゴールデンビザで足りることがほとんどです(違いは永住権・市民権・ビザ・税務居住地の違いで解説しています)。
| 状況 | 次にやること | 期限・窓口 |
|---|---|---|
| これから外国の市民権・国籍を取りたい | 日本国籍を失う前提で、取得後の在留資格・相続・税務・会社の手続きを先に整理する。国籍が不要なら永住権・ゴールデンビザを比べる | 取得前に検討 |
| 外国籍を取ったが、国籍喪失届をまだ出していない | 遅れていても国籍喪失届を出す。日本のパスポートは使わない | 本籍地の市区町村または在外公館 |
| 生まれつきなどで重国籍になり、選択の期限が近い | 国籍選択届(日本を選ぶ場合)または国籍離脱届(外国を選ぶ場合)を出す | 原則20歳まで。市区町村役場・在外公館・法務局 |
| 日本にいる間に外国籍を取って日本国籍を失った | 在留資格取得許可を申請する | 失った日から30日以内。地方出入国在留管理局 |
| 海外で日本国籍を失い、日本に戻って住みたい | 在留資格認定証明書を取得して入国する、または元日本人の帰化を検討する | 地方出入国在留管理局・法務局 |
二重国籍とは:生まれつきの重国籍と、後から取る外国籍の違い
二重国籍(法令上は「重国籍」)とは、2つ以上の国の国籍を同時に持つ状態です。各国が自国の国籍を誰に与えるかを独自に決めているため、父母の国籍で決める国(血統主義)と生まれた場所で決める国(生地主義)が重なると、生まれつき重国籍になる子どもが生じます。法務省の「国籍Q&A」は、重国籍になる典型例として次を挙げています。
- 日本国籍の親と、父母両系血統主義の国(韓国など)の国籍を持つ親の間に生まれた子
- 日本国籍の母と、父系血統主義の国の国籍を持つ父の間に生まれた子
- アメリカ、カナダ、ブラジル、ペルーなど生地主義の国で生まれた日本人の子
- 外国人の親から認知された、または外国人の養子となったことで外国籍を取得した人
- 外国人との婚姻により、相手国の法律で自動的に外国籍が付与された日本人
- 届出で日本国籍を取得した後も、元の外国籍を持ち続けている人
これらは、日本人が自分から外国籍を取得したのではないケースで、日本国籍はすぐには失わず、国籍選択の対象になります(後述の「生まれつきなどで重国籍になった人の国籍選択」)。これに対し、日本人が自分から(未成年の場合は親が代わりに)外国籍を申請して取得した場合は、国籍法第11条第1項により取得と同時に日本国籍を失います。
二重国籍を認めている国・認めていない国一覧【2026年】
各国の対応は「自国民が外国籍を取っても自国籍を持ち続けられるか」と「外国人が帰化するときに元の国籍を捨てる必要があるか」の2点で分かれます。日本人が外国籍を取る場面に関係するのは右側の列ですが、ここが「不要」の国でも、日本の国籍法により日本国籍を失います。表の「―」は、確認できる規定がないことを示します。
| 国 | 自国民が外国籍を取ったとき | 外国人が帰化するときの元の国籍の放棄 | 備考 |
|---|---|---|---|
| アメリカ | 原則として失わない | 帰化の宣誓で旧国籍への忠誠を放棄するが、旧国籍の喪失手続きまでは求めない | 国務省は「米国法は重国籍に触れておらず、どちらかを選ぶことも求めていない」と説明 |
| カナダ | 失わない | 不要 | |
| イギリス | 失わない | 不要 | |
| オーストラリア | 失わない(2002年4月から) | 不要 | |
| ニュージーランド | 失わない | 不要 | |
| アイルランド | 失わない | 不要 | |
| フランス | 原則として失わない | 不要 | |
| イタリア | 失わない | 不要 | 2025年の改正で、外国生まれの子孫への血統による国籍継承を制限 |
| ドイツ | 失わない(2024年6月27日から) | 不要(2024年6月27日から) | 2024年の国籍法改正で重国籍を原則容認 |
| ギリシャ | 失わない | 不要 | |
| ポルトガル | 失わない | 不要 | 2026年5月の改正で帰化に必要な居住年数を延長(重国籍の扱いは変わらず) |
| マルタ | 失わない(2000年から) | 不要 | |
| ノルウェー | 失わない(2020年1月から) | 不要 | |
| スペイン | 外国に住みながら外国籍を取り、3年以内に保持を申告しないと失う | 原則必要 | イベロアメリカ諸国・フィリピン・ポルトガル・フランスなどとの間は例外 |
| オランダ | 原則として失う | 原則必要 | 配偶者の国籍を取る場合などの例外あり |
| オーストリア | 原則として失う | 原則必要 | 事前に国籍保持の許可を得た場合は例外 |
| 韓国 | 自分から外国籍を取ると失う | 原則必要 | 結婚移民・優秀人材などは「外国国籍不行使誓約」で保持できる(2011年〜) |
| 中国 | 自動的に失う | 必要 | 国籍法第3条で二重国籍を認めない |
| 台湾 | 自動的には失わない | 原則必要 | 高度専門人材などは放棄不要 |
| フィリピン | 宣誓すれば保持・再取得できる | ― | 共和国法9225号(2003年) |
| タイ | 外国に帰化すると失うことがある | ― | 出生や婚姻による重国籍は生じうる |
| ベトナム | 単一国籍が原則 | 原則必要 | 2025年7月施行の改正で、ベトナム人の配偶者などは許可を得て元の国籍を保持できる |
| マレーシア | 認めない | 必要 | 国家登録局が2025年12月に「方針に変更はない」と表明 |
| シンガポール | 成人の重国籍を認めない | 必要 | |
| インドネシア | 自分から外国籍を取ると失う | 必要 | 子どもは18歳以降3年以内に選択 |
| インド | 自動的に失う | 必要 | OCI(海外市民証)は国籍ではない |
| UAE | ― | 政府の推薦で国籍を与える場合は不要 | 2021年から投資家・専門家などに推薦制で付与。本人からは申請できない |
| ブラジル | 失わない(2023年10月の憲法改正から) | ― | 生来のブラジル人は、本人が明示的に求めた場合を除き失わない |
| メキシコ | 生まれながらの国民は失わない | 必要 | |
| パナマ | 生まれながらの国民は失わない | 必要 | |
| バヌアツ | 失わない | 不要 | 2013年以降の改正で重国籍を容認 |
| ドミニカ国 | 失わない | 不要 | 市民権投資の公式窓口が「元の国籍の放棄は不要」と案内 |
| セントクリストファー・ネービス | 失わない | 不要 | 同上 |
| アンティグア・バーブーダ | 失わない | 不要 | |
| ナウル | 失わない | 不要 | 国籍法2017年第16条 |
| 日本 | 自分の意思で外国籍を取ると自動的に失う | 必要(帰化の条件に「重国籍防止」) | 生まれつきの重国籍者は20歳までに選択 |
「二重国籍を認めている国」の多くは欧米(スペイン・オランダ・オーストリアなど一部の欧州国を除く)と、市民権投資の制度を持つカリブ海・太平洋の国々です。アジアでは中国・インド・シンガポール・マレーシア・インドネシアが日本と同じく重国籍を認めず、韓国・ベトナム・台湾は限定的に認め、フィリピンは宣誓による保持を認めています。
日本人が外国籍を取ると日本国籍はどうなるか:国籍法11条
「自己の志望」で外国籍を取ると自動的に失う
国籍法第11条第1項は「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」と定めています。外国への帰化や、寄付・投資による市民権の取得がこれに当たり、喪失は外国籍を取得した時点で自動的に生じます。届出をしたときに失うのではなく、届出をしていなくても法律上はすでに日本国民ではありません。
| ケース | 扱い |
|---|---|
| 外国に帰化した | 当たる。日本国籍を失う |
| 寄付・投資で外国の市民権を取得した(バヌアツ、ドミニカ国など) | 当たる。日本国籍を失う |
| 親が未成年の子のために外国籍を申請して取得した | 当たる。子は日本国籍を失う(在ドイツ日本大使館の案内) |
| 外国人との婚姻で、相手国の法律により自動的に外国籍が付与された | 当たらない。法務省「国籍Q&A」は、婚姻などで外国籍を取得した日本人を重国籍の典型例に挙げている。国籍選択の対象 |
| 外国で生まれ、出生により外国籍を取得した | 当たらない。ただし国外出生の場合は国籍留保の届出が必要 |
家族で外国に帰化する場合:子どもも日本国籍を失う
前の表のとおり、親が外国に帰化するときに未成年の子の分もあわせて申請すると、子も日本国籍を失います。一方、その国で生まれて出生により外国籍を持っている子は、親の帰化とは関係なく重国籍のままで、国籍選択の対象です。生地主義でない国(シンガポールなど)では、親が永住者の段階で生まれた子は、出生だけでは現地の国籍を取得していません。親の帰化にあわせて子の国籍がどうなるかを先に確認してください。
帰化した後に「元の国籍を失ったことの証明」の提出を求める国では、外国籍を取得した後に日本で国籍喪失届を出し、喪失が記載された戸籍(除籍)の謄本を提出する流れになります。必要な書類と翻訳・認証の要否は、帰化する国の当局に確認してください。
国籍喪失届:喪失を知った日から1か月以内(国外は3か月以内)
日本国籍を失った人は、本人・配偶者・4親等内の親族が、喪失の事実を知った日から1か月以内(その日に国外にいるときは3か月以内)に、本籍地の市区町村または在外公館に国籍喪失届を出さなければなりません(戸籍法第103条)。届書には喪失の原因と年月日、取得した外国籍を書き、外国籍の取得を証明する書類(帰化証明書やパスポートの写しとその和訳など)を添えます。届出によって戸籍から除かれます。
日本国籍を失うと日本のパスポートは失効する
日本国籍を失うと、日本のパスポートはその時点で効力を失います(旅券法第18条第1項第1号)。失効したパスポートを使って出入国すると「効力を失つた旅券…を行使した者」として5年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方の対象になります(同法第23条第1項第7号)。「日本のパスポートを持ち続けて二重国籍のように使う」ことは、法律上認められていません。失効したパスポートをすでに使ってしまった場合の扱いは個別の事情によるため、弁護士に相談してください。
「届け出なければ分からない」という説明を見かけることがありますが、前述のとおり喪失は届出の有無にかかわらず生じています。戸籍上は日本人のままでも法律上は外国人なので、日本のパスポートの更新・使用、選挙、相続登記、年金、金融機関の手続きなどで、実際の国籍と書類が食い違う問題が生じます。市民権の取得を検討するときは、日本国籍を失う前提で計画を立ててください。
国籍喪失届を出していない人・元日本人の相続
外国籍を取ってから年数がたっていても、国籍喪失届は今から出せますし、出す必要があります。届出期間(喪失を知った日から1か月、国外では3か月。戸籍法第103条)を過ぎても届出は受理されます(同法第46条)。ただし、正当な理由のない遅れは5万円以下の過料の対象です(同法第137条)。海外在住なら在外公館、日本にいれば本籍地の市区町村に届け出ます。
日本の相続権は国籍と関係ありません。外国籍になった元日本人も、日本の親の遺産を相続できます。ただし相続登記や銀行の手続きでは、戸籍上の記載と実際の国籍が合っていることが前提になるため、まず国籍喪失届を出して戸籍を整えるのが先です。外国籍の相続人は日本の印鑑証明書を取れないため、在住国の公証人による署名の認証(必要に応じてアポスティーユ)で代えます(外務省「署名証明」の案内)。元日本人は、遺産相続の手続き用に在外公館で署名証明を受けられる場合もあります。
市民権投資・ゴールデンビザ・永住権と日本国籍の関係
海外に住む権利や外国のパスポートを得る制度はいくつもありますが、日本国籍に影響するのは国籍そのものを取る制度だけです。
| 制度 | 得られるもの | 日本国籍への影響 | 例 |
|---|---|---|---|
| 長期滞在ビザ | 一定期間の滞在許可 | なし | マレーシアMM2H、タイのLTR |
| ゴールデンビザ(投資による居住許可) | 居住許可(更新制) | なし | ポルトガル、ギリシャ、UAE |
| 永住権 | 期限のない居住権 | なし | アメリカのグリーンカード、パナマ、シンガポールPR |
| 市民権投資(CBI) | 国籍・パスポート | 失う | バヌアツ、ドミニカ国、セントクリストファー・ネービス、ナウル |
| 居住後の帰化 | 国籍・パスポート | 失う | ポルトガル(居住10年など)、アメリカ(永住5年など) |
市民権投資の国は「二重国籍を認めている」「元の国籍の放棄は不要」と案内していますが、これはその国の側の話です。日本人が取得すれば、日本の国籍法で日本国籍を失います。「セカンドパスポート」「二重国籍になれる」という宣伝は、日本国籍者には当てはまりません。
市民権を取るかどうかは、日本国籍を手放すことと、外国のパスポートで得られるもの(渡航先の広さ、居住の選択肢など)を比べて判断することになります。各国の費用と条件は世界各国の永住権・市民権 最低料金まとめで比較しています。日本国籍を残したまま海外に拠点を持ちたい場合は、ゴールデンビザや永住権を検討してください。
生まれつきなどで重国籍になった人の国籍選択:期限と方法
国外で生まれた子は、出生から3か月以内に「国籍留保」
外国で生まれ、出生によって外国籍も取得した日本人の子は、出生の日から3か月以内に出生届とあわせて「日本国籍を留保する」意思を届け出ないと、出生の時にさかのぼって日本国籍を失います(国籍法第12条、戸籍法第104条)。届出先は在外公館または本籍地の市区町村です。留保しなかった子も、18歳未満で日本に住所があれば、法務大臣への届出で日本国籍を再取得できます(国籍法第17条第1項)。
国籍選択の期限:20歳まで(18歳以上で重国籍になったら2年以内)
生まれつきなどで重国籍になった人は、期限までにどちらかの国籍を選ばなければなりません(国籍法第14条第1項)。2022年4月1日の成年年齢の引き下げで、期限が変わっています。
| 重国籍になった時期 | 選択の期限 |
|---|---|
| 18歳になる前 | 20歳になるまで(改正前は22歳まで) |
| 18歳になった後 | 重国籍になった時から2年以内 |
| 2022年4月1日時点で20歳以上だった人 | 従前どおり22歳まで(20歳以降に重国籍になった人は2年以内) |
| 2022年4月1日時点で18歳以上20歳未満だった人 | 2022年4月1日から2年以内(2024年3月31日まで) |
生まれつき重国籍の人を生年月日で見ると、2004年4月3日以降に生まれた人は20歳になるまでが期限です。2002年4月2日以前に生まれた人(22歳まで)と、2002年4月3日〜2004年4月2日に生まれた人(2024年3月31日まで)の期限はすでに過ぎています。年齢は誕生日の前日に加算されるため、たとえば2004年4月2日生まれの人は2022年4月1日に18歳になったものとして扱われます。
選択の方法
| 選ぶ国籍 | 方法 |
|---|---|
| 日本国籍を選ぶ | ①外国の法令に従って外国籍を離脱する、または②市区町村役場か在外公館に「日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する」旨の国籍選択届を出す |
| 外国籍を選ぶ | 法務局・在外公館に国籍離脱届を出す(国籍法第13条)、または外国の法令に従って外国籍を選択する |
国籍選択届は、本籍地または住所地の市区町村役場、海外では在外公館に出します。在外公館に出す場合で本籍地の戸籍が電算化されていないときは戸籍謄本1通を添付します。手数料はかかりません。
法務省は、選択の宣言で日本の法律上の義務は果たしたことになると説明していますが、外国の法律によっては外国籍が残り、その場合は外国籍の離脱に努める義務が残ります(国籍法第16条第1項)。また、選択の宣言後も外国籍が残っている人が、自分の意思でその国の公務員の職(その国の国籍がなくても就ける職を除く)に就き、それが日本国籍を選んだ趣旨に著しく反すると認められるときは、法務大臣が日本国籍の喪失を宣告できます(同条第2項)。
外国籍を残すことの負担も判断材料になります。たとえばアメリカ国籍を持ち続ける人は、国外に住んでいても全世界の所得が米国の課税対象で、所得が一定額以上なら米国の確定申告が必要です(詳細は米国の税務専門家にご確認ください)。
選ばなかった場合:法務大臣の催告と国籍喪失
期限までに選択しない人には、法務大臣が書面で国籍選択を催告でき、催告を受けた日から1か月以内に日本国籍を選択しないと日本国籍を失います(国籍法第15条)。ただし、法務省は2009年の国会答弁で「これまで催告をした実例はございません」と述べており、日本弁護士連合会も2024年6月時点で実例はないと説明しています。実例がないことは、選択しなくてよいという意味ではありません。国籍選択は法律上の義務で(国籍法第14条)、選択の記録が戸籍に残ると、パスポートの更新やその後の手続きで国籍を説明しやすくなります。
日本国籍を失った後に日本で暮らす・戻る方法
市民権の取得などで日本国籍を失った人は、法律上は外国人になります。日本に住み続ける、または将来戻るには、在留資格か帰化が必要です。
| 方法 | 内容 | 根拠・窓口 |
|---|---|---|
| 日本国内で国籍を失った:在留資格取得許可申請 | 国籍を失った日から60日間は在留資格なしで滞在できる。60日を超えて住むには、失った日から30日以内に申請する(手数料なし) | 出入国管理及び難民認定法第22条の2、地方出入国在留管理局 |
| 海外で国籍を失い、日本に住みたい:在留資格認定証明書 | 日本の受け入れ先(家族など)を通じて在留資格認定証明書を申請し、交付後に在外公館でビザを取って入国する | 地方出入国在留管理局 |
| 日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者のほか、「日本人の子として出生した者」が対象。本人の出生時に父母の一方が日本国民だった元日本人は、これに当たるとして申請できる(許可は審査による) | 出入国管理及び難民認定法別表第二、出入国在留管理庁 |
| 経営・管理など | 日本で会社を経営する場合は「経営・管理」など、活動に合った在留資格も選べる | 出入国在留管理庁 |
| 永住者 | 日本人の配偶者は婚姻3年以上かつ1年以上在留、日本人の実子は1年以上在留などで申請できる(永住許可ガイドライン) | 出入国在留管理庁 |
| 元日本人の帰化(簡易帰化) | 「日本の国籍を失つた者で日本に住所を有するもの」は、住所・年齢・生計の条件を満たさなくても帰化を許可できる(日本に帰化した後に失った人を除く) | 国籍法第8条第3号、法務局 |
帰化で日本国籍を取り戻すには、取得した外国籍を手放すことが求められます(帰化の重国籍防止条件)。元日本人の簡易帰化の具体的な審査は法務局に確認してください。日本国籍を失った後の在留資格と永住申請の流れは、日本国籍を喪失した後の在留資格で詳しく解説しています。
二重国籍をめぐる裁判と、日本の国籍法改正の動き
欧州在住の日本出身者らが「国籍法第11条第1項は憲法違反」として日本国籍の確認などを求めた訴訟では、東京地裁が2021年1月21日に、東京高裁が2023年2月21日に、いずれも同項を合憲と判断して請求を退けました。高裁は、憲法第22条第2項が保障するのは国籍離脱の自由で、国籍を離脱しない自由まで保障したものではない、という趣旨の判断を示したと報じられています。弁護団の発表によると、最高裁は2023年9月28日に上告を棄却しました。
2026年10月時点で、政府が重国籍を認める方向で国籍法を改正する動きは確認できません。むしろ一般の帰化の審査は2026年4月から厳しくなっています(原則10年以上の在留など)。法改正を前提にした判断はできない状況です。
よくある質問
日本で二重国籍は違法ですか?
生まれつきの重国籍は違法ではなく、期限までに国籍を選ぶ義務があるだけです。一方、日本人が自分の意思で外国籍を取った場合は、二重国籍の状態にはならず、取得の時点で日本国籍を失います。失った後に日本のパスポートを使うと、旅券法違反で5年以下の拘禁刑などの対象になります。
相手の国が二重国籍を認めていれば、日本国籍も残せますか?
残せません。日本の国籍法第11条第1項は、相手国の制度と関係なく、自分の意思で外国籍を取得した日本人は日本国籍を失うと定めています。
外国の永住権やゴールデンビザを取ると、日本国籍を失いますか?
失いません。永住権・ゴールデンビザ・長期滞在ビザは居住の許可で、国籍ではないためです。
外国人と結婚すると日本国籍はどうなりますか?
結婚しただけでは日本国籍は失いません。相手国の法律で結婚により自動的に外国籍が付与された場合は「自己の志望」に当たらず、重国籍として国籍選択の対象になります。結婚後に自分で相手国へ帰化を申請した場合は、日本国籍を失います。
国籍選択の期限を過ぎてしまいました。どうなりますか?
期限を過ぎても直ちに日本国籍を失うわけではなく、法務大臣の催告を受けてから1か月以内に選択しないと失います(催告の実例はこれまでないとされています)。期限を過ぎていても国籍選択届は出せるため、早めに市区町村役場か在外公館に届け出てください。
市民権を取った後、日本に住み続けられますか?
外国人として在留資格を得れば住めます。日本にいる間に国籍を失った場合は、失った日から30日以内に在留資格取得許可申請をします。元日本人は、出生時に父母の一方が日本国民であれば「日本人の配偶者等」の在留資格を申請でき、その後、永住者への変更も申請できます。
日本国籍を失った後、取り戻せますか?
日本に住所があれば、国籍法第8条第3号の元日本人の帰化(簡易帰化)を申請できます。ただし、もともと帰化で日本国籍を得た人は対象外で、帰化するには取得した外国籍を手放すことが求められます。
まとめ:日本人が二重国籍になる方法は原則ない。目的に合う制度を選ぶ
- 日本は二重国籍を原則認めない。自分の意思で外国籍を取ると、取得の時点で日本国籍を自動的に失う(国籍法第11条第1項)。相手国が重国籍を認めていても同じ
- 国籍喪失届は喪失を知った日から1か月以内(国外は3か月以内)。遅れても出せる。失効した日本のパスポートは使えない
- 海外に住む権利が目的なら、国籍ではなく永住権・ゴールデンビザ・長期滞在ビザで足りる。これらは日本国籍に影響しない
- 生まれつきの重国籍は、20歳まで(18歳以上で重国籍になったら2年以内)に国籍を選ぶ。国外出生の子は3か月以内の国籍留保が必要
- 日本国籍を失った後も、在留資格(日本人の配偶者等・永住者など)や元日本人の簡易帰化で日本に住む道がある
関連記事:永住権・市民権・ビザ・税務居住地の違い、ゴールデンビザとは、バヌアツ市民権、ドミニカ市民権、ナウル市民権、日本国籍を喪失した後の在留資格、海外移住の税金と住民票
当事務所では、市民権・永住権・ゴールデンビザの比較相談のほか、市民権取得後の国籍喪失届の作成、日本国籍を失った後の在留資格の申請、帰化の申請に必要な戸籍の取り寄せ・翻訳・アポスティーユにも対応しています。海外にお住まいの方からのご相談もお受けしています。「日本国籍を残したいのか、手放してもよいのか」から整理したい方は、無料相談をご利用ください。
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参考(一次情報・出典)
- e-Gov法令検索:国籍法(昭和25年法律第147号)
- e-Gov法令検索:戸籍法 第46条・第103条・第104条・第137条
- e-Gov法令検索:旅券法 第18条・第23条
- 法務省:国籍Q&A
- 法務省:国籍の選択について
- 法務省:国籍選択は重国籍者の大切な義務です(パンフレット)
- 法務省:国籍選択の届出
- 外務省:署名証明(在外公館における証明)
- IRS:U.S. Citizens and Resident Aliens Abroad
- 法務省:国籍離脱の届出
- 国会会議録:第171回国会 衆議院法務委員会 第6号(2009年4月17日)
- 日本弁護士連合会:国籍法Q&A(2024年6月)
- 在アメリカ合衆国日本国大使館:国籍の喪失・離脱
- 在ドイツ日本国大使館:国籍(自己の志望による外国籍取得)
- e-Gov法令検索:出入国管理及び難民認定法(第22条の2、別表第二)
- 出入国在留管理庁:在留資格取得許可申請
- 出入国在留管理庁:在留資格「日本人の配偶者等」
- 出入国在留管理庁:永住許可に関するガイドライン
- 法務大臣閣議後記者会見(2026年3月27日・帰化の運用見直し)
- 有斐閣:東京高判令和5年2月21日(国籍法11条1項の合憲性)
- U.S. Department of State:Dual Nationality
- Government of Canada:Dual citizenship
- GOV.UK:Dual citizenship
- Bundesverwaltungsamt:国籍法改正(2024年6月27日施行)
- Easy Law(韓国法制処):複数国籍
- 中国国家移民管理局:中華人民共和国国籍法
- ICA Singapore:Dual citizenship
- Vanuatu Citizenship Office:Amendments to the Citizenship Act
- Dominica CBIU:The benefits of dual citizenship
- Republic of Nauru:Naoero Citizenship Act 2017
本記事の法令・制度は2026年10月1日時点の公表情報にもとづきます。各国の国籍法は改正が多いため、手続きの前に当該国の当局で最新の要件を確認してください。


