ポルトガル移住のビザの種類と条件|D7・D8・D2・ゴールデンビザを日本人向けに比較

ポルトガルへの移住で日本人が使える居住ビザは、年金や不労所得で暮らすD7、リモートワーク収入で暮らすD8、現地で起業・独立するD2、投資で滞在義務を最小にするゴールデンビザの4種類に整理できます。どれも「無犯罪」「生活できる資力」「住居」「保険」という共通条件は同じで、違いは「何の収入・資金で条件を満たすか」と「どれだけポルトガルに住む義務があるか」です。本記事では、4種類のビザの条件を2026年の基準額(最低賃金920ユーロ)で比較し、家族の同伴、永住権・市民権までの年数、日本の大使館での申請手順と必要書類までをまとめました。ゴールデンビザの投資ルートと費用は、ポルトガル・ゴールデンビザのすべてと総費用の試算で詳しく解説しているため、本記事では他のビザとの比較に絞ります。

※本記事は2026年9月12日時点の公表情報(ポルトガル政府・AIMA・在外公館の案内、2025年10月施行の外国人法 Lei n.º 61/2025、2026年5月施行の国籍法 Lei Orgânica n.º 1/2026)をもとにした一般的な解説です。収入基準は毎年の最低賃金改定で変わり、領事館ごとに求められる書類も異なります。円換算は1ユーロ=180円(2026年9月12日の仲値)で計算しています。個別の申請可否や税務判断は、申請前に専門家へご確認ください。

目次

  1. 結論:日本人が使えるポルトガルの移住ビザは4種類
  2. 全ビザに共通する移住の条件
  3. D7ビザ:年金・家賃・配当など不労所得で暮らす人向け
  4. D8ビザ:リモートワーク・フリーランス収入で暮らす人向け
  5. D2ビザ:ポルトガルで起業・独立する人向け
  6. ゴールデンビザ:投資で滞在義務を最小にしたい人向け
  7. 永住権・市民権までの年数:永住5年、国籍は10年に延長
  8. 日本からの申請手順と必要書類
  9. よくある質問
  10. まとめ:収入の種類でビザが決まり、滞在義務で暮らし方が決まる

結論:日本人が使えるポルトガルの移住ビザは4種類

最初に4種類を一覧にします。収入基準はポルトガルの2026年の最低賃金(月920ユーロ)を基準に定められています。

ポルトガル移住ビザの比較(2026年9月12日時点、1ユーロ=180円)
ビザ向いている人と主な条件家族の同伴滞在義務
D7(不労所得)年金・家賃・配当で暮らす人。月920ユーロ(約16.6万円)以上の不労所得可(同時申請)許可期間中、連続6か月・通算8か月を超えて国外に出ない
D8(リモートワーク)日本や第三国の会社から報酬を得る人。月3,680ユーロ(約66.2万円)以上の就労収入2年型は可、1年型は不可同上(2年型)
D2(起業・独立)ポルトガルで会社を作る人、現地顧客を持つフリーランス。事業計画+年11,040ユーロ(約198.7万円)の生活資金可(同時申請)同上
ゴールデンビザ(投資)日本を拠点にしたまま滞在資格を持ちたい人。ファンド50万ユーロ(約9,000万円)または文化支援25万ユーロ(約4,500万円)など可初年度7日、以後2年ごとに14日

D7・D8・D2は、大使館の審査に通ると4か月有効の入国ビザが発給され、入国後にAIMA(移民・統合・庇護庁)で2年間の居住許可を受け取ります。ゴールデンビザはAIMAに直接申請して居住許可を受けます。以後はいずれも3年ごとの更新で、合法居住5年で永住許可、10年で市民権(国籍)の申請資格が生じます。つまり、入口の条件は違っても、入国後の道筋は同じです。

全ビザに共通する移住の条件

ビザの種類を選ぶ前に、どのビザでも求められる条件を確認しておくと、自分がどれを使えるかが判断しやすくなります。2025年10月23日施行の新しい外国人法(Lei n.º 61/2025)で、資力・住居・身元に関する審査は以前より厳格になりました。

  • 無犯罪であること:日本の警察証明書(犯罪経歴証明書)を提出します。発行から3か月以内のものに外務省のアポスティーユを付けます。
  • 生活できる資力:基準は年11,040ユーロ(最低賃金920ユーロ×12か月)。配偶者は50%、18歳未満の子は30%を加算します。ポルトガルの銀行口座の残高で示すことが多く、領事館によっては口座開設とNIF(納税者番号)の取得を申請前に求められます。
  • ポルトガルの住居:賃貸契約書または不動産の所有証明。12か月以上の賃貸契約を求められることが一般的です。
  • 健康保険:入国から居住許可の取得までをカバーする医療保険。
  • 滞在の実態:居住許可を維持するには、許可期間中に連続6か月または通算8か月を超えてポルトガルを離れないこと(ゴールデンビザは例外)。
  • ビザの有効範囲:新法により、D型の入国ビザはポルトガル国内のみ有効です。居住許可カードを受け取った後は、シェンゲン圏内を180日中90日まで移動できます。

家族を連れて行く場合:同時申請なら待機期間なし

配偶者と18歳未満の子(学生は概ね24歳まで)は、本人と同時に領事館で申請すれば一緒に居住許可を受けられます。一方、本人が先に渡航して後から呼び寄せる「家族再統合」は、新法で本人が居住許可を2年間保有していることが条件になりました(未成年の子、ゴールデンビザ保持者の家族、高度専門職の配偶者などは例外)。家族で移住するなら、最初から全員分を同時に申請するほうが確実です。D8の1年型(一時滞在ビザ)は家族の同伴ができないため、家族連れは2年型を選びます。

D7ビザ:年金・家賃・配当など不労所得で暮らす人向け

D7は「受動的所得ビザ」とも呼ばれ、就労せずに暮らせる収入があることを示して取得します。リタイア層の移住で最も使われているビザです。

D7ビザの条件
項目内容
収入基準月920ユーロ(約16.6万円)以上。年額11,040ユーロ
認められる収入年金、賃料、配当、利子、著作権料など。給与・フリーランス報酬は原則不可
家族加算配偶者 月460ユーロ、18歳未満の子 月276ユーロ
預金の目安年額分(11,040ユーロ)をポルトガルの口座に置くのが一般的
居住許可2年→3年更新。5年で永住許可の申請資格
滞在義務許可期間中、連続6か月・通算8か月を超えて国外に出ない

基準額は最低賃金と同額なので低く見えますが、審査では「安定して続く収入か」が見られます。日本の年金は年金振込通知書や年金額改定通知書で証明でき、賃料収入は賃貸借契約書と入金記録、配当は証券会社の年間取引報告書で示します。基準ぎりぎりではなく、基準の1.5〜2倍の収入と年額分の預金を用意しておくと審査が通りやすくなります。

注意点は、D7で認められるのは不労所得であり、日本の勤務先からの給与や業務委託報酬は原則として対象外なことです。リモートワーク収入で移住したい場合は、次のD8を使います。

D8ビザ:リモートワーク・フリーランス収入で暮らす人向け

D8は2022年に始まったデジタルノマド向けのビザで、ポルトガル国外の雇用主や顧客から得る就労収入で条件を満たします。日本の会社に在籍したままリモートで働く人、海外顧客を持つフリーランスが対象です。

D8ビザの条件
項目内容
収入基準月3,680ユーロ(約66.2万円)以上。最低賃金の4倍
証明方法直近3か月の給与明細・請求書・入金記録と、雇用契約書または業務委託契約書
生活資金年11,040ユーロ(約198.7万円)以上の預金。家族分は加算
種類1年型(一時滞在ビザ、家族同伴不可)と2年型(居住ビザ、家族同伴可)
居住許可2年型は2年→3年更新。5年で永住許可の申請資格
滞在義務許可期間中、連続6か月・通算8か月を超えて国外に出ない

収入基準がD7の4倍と高いのは、就労収入は失われる可能性があると見られているためです。基準額の3,680ユーロが額面か手取りかは法令に明記がなく、領事館の運用によります。申請前に東京の大使館に確認しておくと安全です。

永住や市民権まで見据えるなら、最初から2年型(居住ビザ)を選びます。1年型は一時滞在扱いで、滞在期間が永住許可の要件に算入されないためです。また、日本の雇用主に在籍したままポルトガルに住む場合、日本と現地の双方で税務上の居住地が問題になります。海外移住の税金と住民票の手続きで整理しています。

D2ビザ:ポルトガルで起業・独立する人向け

D2は起業家・独立専門職向けのビザで、ポルトガルで会社を設立する人、既存企業を買収する人、ポルトガルの顧客と業務委託契約を結ぶフリーランスが対象です。

D2ビザの条件
項目内容
事業の証明事業計画書と、会社設立(または設立準備)の証拠。フリーランスは現地顧客との契約書
投資額法定の最低額はない。事業計画と資本の整合性が審査される
生活資金年11,040ユーロ(約198.7万円)以上。家族分は加算
居住許可2年→3年更新。5年で永住許可の申請資格
審査の傾向経済的な貢献が小さいと判断された事業は不許可になりやすい

D2は投資額の下限がない代わりに、事業計画の実現性が審査の中心になります。飲食店やゲストハウスなど実店舗の開業計画、日本との輸出入事業などで使われます。会社設立にはポルトガルのNIF、銀行口座、登記が必要で、渡航前に現地の会計士や弁護士と準備を進めるのが一般的です。

ゴールデンビザ:投資で滞在義務を最小にしたい人向け

ゴールデンビザ(ARI)は、ポルトガルへの投資と引き換えに居住許可を得る制度です。ほかの3種類と最も違うのは滞在義務が初年度7日、以後2年ごとに14日と極端に短いことで、日本に拠点を残したまま欧州の滞在資格を持ちたい人に向いています。

ゴールデンビザの主な投資ルート(2026年)
ルート最低額
非不動産型の投資ファンド500,000ユーロ(約9,000万円)
芸術・文化遺産への支援250,000ユーロ(約4,500万円)
研究活動への投資500,000ユーロ(約9,000万円)
会社設立・増資500,000ユーロ(約9,000万円)
雇用創出10人以上の雇用

不動産購入のルートは2023年10月に廃止されています。投資額のほかにAIMAの公定料金や弁護士費用がかかり、家族を含めた総額の考え方はポルトガル・ゴールデンビザの総費用で試算しています。制度の全体像はポルトガル・ゴールデンビザのすべてをご覧ください。

永住権・市民権までの年数:永住5年、国籍は10年に延長

4種類のビザは入国後に同じ居住許可に統一されるため、永住権・市民権までの道筋は共通です。ただし、市民権の要件は2026年5月19日施行の国籍法改正で大きく変わりました。

居住許可から市民権までの流れ
段階要件備考
一時居住許可ビザ取得後、AIMAで発給初回2年、以後3年ごとに更新
永住許可合法居住5年ポルトガル語A2程度の要件あり。ゴールデンビザ保持者も5年で申請可
市民権(国籍)合法居住10年(EU・CPLP諸国の国民は7年)2026年5月19日以降の申請に適用。居住年数は最初の居住許可の発給日から数える

改正前は5年でしたが、日本人を含むEU・CPLP(ポルトガル語圏諸国共同体)以外の国民は10年になりました(改正の詳細はポルトガル・ゴールデンビザのすべての「国籍法改正」の節で解説しています)。年数の起算点も「申請日」から「最初の居住許可が発給された日」に変わり、AIMAの審査待ちの期間は算入されません。あわせて、ポルトガル語能力に加えて文化・歴史・国の象徴に関する知識と、民主主義の原則を尊重する宣誓が求められます。2026年5月18日までに提出済みの国籍申請は旧法(5年)で審査されます。

なお、日本は二重国籍を認めていないため、ポルトガル国籍を取得すると日本国籍を失います。永住許可の段階で止めるか国籍まで取るかは、永住権・市民権・ビザ・税務居住地の違いを参考に検討してください。

日本からの申請手順と必要書類

D7・D8・D2は、日本に住んでいる人は東京のポルトガル大使館(領事部)に申請します。受付窓口や予約方法は変更されることがあるため、申請前に大使館の案内で確認してください。2024年6月以降、ポルトガル国内に滞在しながら居住許可を申請する方法は廃止されたため、必ず日本で申請してから渡航します。手順は次のとおりです。

申請から居住許可までの流れ
順序やること期間の目安
1NIF(納税者番号)の取得、ポルトガルの銀行口座開設、住居の契約1〜3か月
2日本側の書類を揃える(警察証明書+アポスティーユ、収入証明、保険、残高証明)2〜4週間
3大使館に予約のうえ申請。法定の審査期限は60日実際は2〜4か月
44か月有効の入国ビザで渡航し、AIMAの予約で生体情報を登録入国後120日以内
52年間の居住許可カードを受領予約から数週間〜数か月

日本側で準備する書類のうち、警察証明書と戸籍謄本にはアポスティーユが必要です。ポルトガルはハーグ条約の締約国なので、外務省のアポスティーユを付ければ大使館の領事認証は不要です。翻訳は英語で受理される場合とポルトガル語訳を求められる場合があり、大使館に確認したうえで用意します。

日本側の書類費用の目安(1人分)
項目費用の目安
警察証明書(犯罪経歴証明書)無料(各都道府県警察本部。発行に約2週間)
戸籍謄本450円
アポスティーユ取得(外務省)無料。代行を依頼する場合は当事務所16,000円+税〜
翻訳(英語・ポルトガル語)A4 1枚あたり3,500円+税〜
ビザ申請料(大使館)約90〜110ユーロ(約1.6万〜2万円。時期・領事館で異なる)
居住許可カード(AIMA)247.30ユーロ(受付・分析133ユーロ+発給114.30ユーロ、約4.5万円)
健康保険(1年)数万円〜(保険会社により異なる)

警察証明書のアポスティーユ取得と英訳・ポルトガル語訳は、アポスティーユ・領事認証代行オフィスで対応しています。海外在住のご家族の戸籍謄本の取り寄せは戸籍謄本の取得代行をご利用ください。

よくある質問

日本の会社に在籍したままD7で移住できますか?

原則できません。D7は年金・賃料・配当などの不労所得が対象で、給与や業務委託報酬は認められないのが通例です。給与収入で移住する場合はD8(月3,680ユーロ以上)を使います。

収入が基準に少し足りない場合はどうなりますか?

不許可の可能性が高くなります。基準額は最低ラインで、審査では収入の安定性と預金残高もあわせて見られます。年額分以上の預金を口座に置く、複数の収入源を組み合わせるなどで補強してから申請するのが一般的です。

ポルトガル語は必要ですか?

ビザ申請と居住許可の取得には不要です。永住許可と市民権の申請時にA2程度のポルトガル語能力が求められ、市民権では文化・歴史の知識も審査されます。

ゴールデンビザと D7 はどちらが早く永住権を取れますか?

同じです。どちらも合法居住5年で永住許可の申請資格が生じます。違いは滞在義務で、D7は年の大半をポルトガルで暮らす必要があり、ゴールデンビザは2年ごとに14日で足ります。

NHR(非常居住者税制)はまだ使えますか?

従来のNHRは2024年で新規適用が終了し、研究職・高度専門職などに対象を絞ったIFICI(NHR 2.0)に置き換わりました。年金生活者向けの優遇はなくなっているため、D7で移住する場合は日本の年金がポルトガルでどう課税されるかを事前に確認してください。

まとめ:収入の種類でビザが決まり、滞在義務で暮らし方が決まる

ポルトガル移住のビザは、年金・不労所得ならD7、リモートワーク収入ならD8、現地で事業をするならD2、投資で滞在義務を最小にするならゴールデンビザ、と収入や資金の種類で決まります。入国後はどれも同じ2年の居住許可になり、5年で永住、10年で市民権という道筋は共通です。家族で移住するなら同時申請、日本の書類にはアポスティーユ、というのが手続き上の要点です。

他の国と比べてどうか

ヨーロッパの中では、ポルトガルはD7の収入基準(月920ユーロ)が低く、永住までの5年も標準的です。一方、市民権が10年に延びたことで、国籍取得を目的とする人にとっては以前ほどの優位性はなくなりました。同じ南欧ではギリシャのゴールデンビザが不動産投資で取得でき、比較対象になります(ギリシャ・ゴールデンビザの現状)。各国の永住権・市民権の最低費用は世界各国の永住権・市民権の費用まとめで一覧にしています。

当事務所では、ポルトガルを含む各国の永住権・長期滞在ビザの比較相談と、申請に必要な日本の書類のアポスティーユ取得・翻訳に対応しています。どのビザが使えるか、収入や家族構成をもとに整理したい方は、無料相談をご利用ください。しつこい営業は一切いたしません。

参考(一次情報・出典)

本記事の手数料は2026年9月12日時点。円換算は1ユーロ=180円。

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