
相続人の中に海外に住んでいる人がいると、遺産分割協議書の作り方や、印鑑証明書の代わりに何を出すかで迷うことがあります。反対に、亡くなった人が海外に銀行口座や不動産を持っていた場合は、日本で作った遺産分割協議書を英訳して、アポスティーユを付けて現地に出すよう求められることもあります。海外に住む日本人の相続人は、印鑑証明書の代わりに現地の日本大使館・総領事館で「署名証明(サイン証明)」を、住所の証明に「在留証明」を取るのが基本です。日本の遺産分割協議書を海外で使うときは、私文書なので、公証役場で署名の認証を受けてから、法務局と外務省の証明を受けます。このページでは、この2つの場面に分けて、必要な書類と手順、英訳の注意点を整理します。
※本ページは、外務省「在外公館における証明」「申請手続きガイド」、法務省「外国在住者の印鑑証明書に代わる証明」「外国に住所を有する外国人の住所証明情報」「法定相続情報証明制度」、日本公証人連合会「遺産分割協議」「外国文認証」「手数料」、国税庁「国外に住む相続人の相続税」の案内をもとに、2026年10月27日時点で作成しています。相続登記の申請代理は司法書士、相続税の申告代理は税理士、遺産分割の話し合いがまとまらない場合の交渉は弁護士の業務です。当事務所は、書類の英訳と認証(公証・アポスティーユ)をお手伝いします。
結論:場面ごとに必要な書類が違う
| 場面 | 必要になるもの | 取り方 |
|---|---|---|
| 海外に住む日本人の相続人が、日本の遺産分割協議書に署名する | 署名証明(印鑑証明書の代わり)、在留証明(住所の証明。相続登記などで必要) | 住んでいる国の日本大使館・総領事館に本人が出向く |
| 海外に住む外国籍の相続人がいる | 本国・居住国の公証人などの署名の証明や住所の証明(手続きの窓口に確認) | 現地の公証人など |
| 日本の遺産分割協議書を海外の銀行・裁判所などに出す | 遺産分割協議書+英訳+公証役場の認証+アポスティーユ | 公証役場 → 法務局 → 外務省 |
| 相続人であることを海外に示す | 戸籍謄本(+英訳、アポスティーユ) | 市区町村 → 外務省 |
なお、2024年4月1日から相続登記は義務になりました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。2024年3月31日以前の相続でも、登記していなければ2027年3月31日が期限です(法務局)。海外に住む相続人との書類のやりとりには時間がかかるため、早めに準備を始めてください。
海外に住む日本人の相続人:署名証明と在留証明
日本の相続手続き(不動産の相続登記、銀行の解約など)では、遺産分割協議書に相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を付けるのが一般的です。日本に住民登録がない海外在住の人は印鑑証明書を取れないため、その代わりに在外公館の署名証明を使います。
署名証明(サイン証明)
署名証明は、本人の署名であることを在外公館が証明するものです。外務省は、用途の例として不動産登記や銀行ローンを挙げています。
| 項目 | 内容(外務省の案内) |
|---|---|
| 形式 | 形式1(貼付型):日本から送られた遺産分割協議書などに領事の面前で署名し、在外公館の証明書と綴り合わせて割り印をする/形式2(単独型):署名だけを単独で証明する |
| 申請できる人 | 日本国籍の人 |
| 申請の方法 | 本人が出向き、領事の面前で署名する(代理・郵送は不可)。署名済みの書類を持って行くと、署名し直しになる |
| 持っていくもの | 日本のパスポートなどの本人確認書類、形式1なら署名する書類(遺産分割協議書) |
| 手数料 | 1通1,700円相当(現地通貨) |
どちらの形式が必要かは提出先(法務局・銀行など)によるため、事前に確認してください。遺産分割協議書は日本で作って海外に送り、署名をしないまま在外公館に持って行きます。
在留証明(住所の証明)
相続登記などで住所の証明が必要な場合は、在留証明を取ります。日本国籍で、日本に住民登録がなく、現地に3か月以上住んでいる(または住む予定の)人が対象で、手数料は1通1,200円相当です。在外公館でしか発給されないため、一時帰国中に日本で取ることはできません。本籍地を番地まで載せたい場合は戸籍謄本も必要です。
手数料や必要書類は公館によって違うことがあるため、住んでいる地域の日本大使館・総領事館の案内を確認してください。
近くに在外公館がない場合
法務省は、不動産登記の印鑑証明書の代わりについて、領事の署名証明を取るのが難しい場合は、外国の公証人による署名証明でもよいとしています。どの証明を受け付けるかは、法務局や銀行など手続きの窓口に確認してください。
海外に住む外国籍の相続人がいる場合
外国籍の相続人は在外公館の署名証明を受けられません。代わりにどの証明(本国・居住国の公証人による署名証明など)を出すかは、法務局や銀行など手続きの窓口に確認してください。その相続人が日本の不動産を相続して登記名義人になる場合、法務省は住所の証明として、本国・居住国の官憲の住所証明書か、公証人が認証した宣誓供述書と旅券の写しを求めています(2024年4月1日以降の申請)。外国語の書類には訳文が必要です。本国や居住国に公証制度がない場合などは、日本の公証人の認証でもよいとされています。
遺産分割協議書の内容を外国籍の相続人に理解してもらうために、英訳を付けて送ることもよくあります。署名する書類が日本語だけでよいか、英訳を並べた書面にするかは、手続きの窓口と相談してください。
日本の遺産分割協議書を海外で使う場合
亡くなった人の海外の銀行口座の解約や、海外の不動産・証券の名義変更では、日本の遺産分割協議書を英訳し、アポスティーユを付けて出すよう求められることがあります。遺産分割協議書は相続人が作った私文書なので、外務省に直接は出せません。
- 提出先の指示を確認する:英訳の要否、相続人全員の署名の認証が必要か、アポスティーユが必要か
- 英訳を作る:遺産分割協議書(必要なら戸籍謄本も)を英訳する
- 公証役場で認証を受ける:相続人の署名の認証を受けます。提出先が認める場合は、翻訳者の宣言書の認証で足りることもあります。方法は公証役場に確認してください
- 法務局・外務省の証明を受ける:公証人が所属する法務局で押印証明を受け、外務省でアポスティーユを受ける
北海道(札幌法務局管区内)・宮城・東京・神奈川・静岡・愛知・大阪・福岡の公証役場では、公証人の認証・法務局の押印証明・外務省のアポスティーユを一度に受けられます(ワンストップサービス)。アポスティーユ条約(ハーグ条約)に加盟していない国に出す場合は、外務省の公印確認と、その国の大使館・領事館の領事認証が必要です(公印確認・領事認証とアポスティーユの違い)。
相続人全員がそれぞれ署名の認証を受ける必要があるかは、提出先の要件によります。日本公証人連合会は、代理人による認証もできるものの、提出先によっては本人の面前での認証を求められることがあると案内しています。海外の提出先が、宣誓のうえでの供述(Affidavit)を求めている場合は宣誓供述書(Affidavit)をご覧ください。
公証人の手数料
私署証書の認証の手数料は1件11,000円で、同じ内容を公正証書にした場合の手数料の半額がそれより低ければその額です。外国語の書面なら6,000円が加わります(公証人手数料令34条)。遺産分割協議書のように財産の金額が書かれた書面の手数料がいくらになるかは、書類を見せて公証役場に確認してください。宣誓供述書などを「宣誓認証」で認証する場合は定額11,000円で、外国語の書面なら6,000円が加わります(同)。
公正証書で作る方法
遺産分割協議は、公証役場で公正証書にすることもできます。相続人が一堂に会さず、持ち回りで進めることもできると日本公証人連合会は案内しています。公正証書の謄本を海外に出す場合の認証の流れは、事前に公証役場と外務省に確認してください。
相続人であることを示す書類
海外の提出先から「相続人であることの証明」を求められたら、日本国籍の人は戸籍謄本(除籍謄本を含む)を使います。戸籍謄本は市区町村が発行する公文書なので、発行から3か月以内の原本なら外務省で直接アポスティーユを受けられます。英訳を付けるなら公証役場を通します。詳しくは戸籍謄本のアポスティーユをご覧ください。
法務局の「法定相続情報一覧図の写し」(無料)は、日本の相続手続きで戸籍の束の代わりに使えますが、法務省は相続手続き以外には使えないとしています。被相続人や相続人が日本国籍でなく戸籍謄本を付けられない場合は、この制度自体を使えません。また、海外の提出先が受け付けるか、アポスティーユを付けられるかは確認できなかったため、海外に出す場合は戸籍謄本を基本にしてください。
英訳で気をつけること
- 書類名:遺産分割協議書は「Agreement on Division of Estate」「Estate Division Agreement」などと訳します。被相続人は「Decedent」、相続人は「Heir」です(決まった公式の訳はありません。法令の英訳〈日本法令外国語訳データベース〉では、民法の「遺産の分割」を「dividing an estate」と訳しています)
- 財産の表示:不動産は所在・地番・家屋番号を、預貯金は金融機関名・支店名・口座の種類と番号を、原文と同じ順に訳します
- 氏名と住所:相続人の氏名はパスポートの表記に、住所は在留証明や現地の住所表記にそろえます
- 日付と金額:和暦は西暦に直し、金額は「JPY 10,000,000」のように通貨を明示します
相続税の申告がある場合
日本に住所がない相続人が相続税を申告するときは、納税管理人を定め、税務署に「納税管理人届出書」を出します。どの財産が課税されるかは、相続人の国籍や住所、亡くなった人の住所などで変わります。海外に住む人の相続税の考え方は、移住サイトの相続税がない国一覧でも解説しています。申告は税理士にご相談ください。
よくある質問
海外に住んでいて印鑑証明書が取れません。何を出せばいいですか?
日本国籍なら、住んでいる国の日本大使館・総領事館で署名証明(サイン証明)を取ります。署名する書類と一緒に綴り合わせる形式(形式1)なら、署名前の遺産分割協議書を持って出向き、領事の面前で署名します。住所の証明が必要なら在留証明も取ります。
署名証明は郵送で頼めますか?
できません。本人が在外公館に出向き、領事の面前で署名する必要があります。
遺産分割協議書の英訳は、相続人の誰かが作ってもいいですか?
日本の手続きのために内容を理解してもらう目的なら、作成者の決まりはありません。海外の提出先に出す英訳で、正確であることの証明(翻訳者の宣言書の認証など)が求められている場合は、提出先の指示に合わせてください。
海外の銀行に出す遺産分割協議書には、相続人全員の公証が必要ですか?
必要な認証の内容は提出先の要件によります。提出先の必要書類の一覧で、相続人全員の署名の認証が必要かを確認してください。
当事務所のサービス
当事務所(特定行政書士 佐藤大河)は、遺産分割協議書・戸籍謄本などの英訳、宣言書の作成、公証役場での認証、外務省のアポスティーユ、海外への発送までをお引き受けします。海外に住む相続人に送る書類の英訳や、戸籍謄本の取り寄せもご相談ください。相続登記・相続税の申告・遺産分割の交渉は、それぞれ司法書士・税理士・弁護士の業務のため、当事務所では行いません。
| サービス | 料金 |
|---|---|
| アポスティーユ取得代行(公文書のみ/私文書を含む) | 17,600円(税込) |
| 書類が2通以上の場合の加算 | 2通目以降1通につき3,300円(税込) |
| 翻訳(英語) | A4サイズ1枚あたり3,850円(税込)〜 |
| 国内返送(レターパックライト) | 450円 |
| 海外発送(DHL・FedEx・EMS) | 3,300円(税込)+送料実費 |
日数の目安は、書類がそろってから、私文書で3営業日程度、翻訳を付ける場合は5〜6営業日程度です。公証人の手数料・送料などの実費は別にかかります。当事務所は日本国内での認証の取得を代行するもので、提出先で書類が受け付けられることを保証するものではありません。
戸籍の取り寄せは戸籍謄本の郵送取得代行、私文書全般は委任状・在職証明書など私文書のアポスティーユ、料金はご利用料金をご覧ください。
無料見積り・相談フォーム/お電話:03-6303-1664(平日9:00〜20:00〈日本時間〉/土日祝は事前予約制)

