売買契約書は、英語で Sales Agreement、Purchase Agreement、Sale and Purchase Agreement などといいます。売主は Seller、買主は Buyer(または Purchaser)、売買の対象になる物は Products や Goods と書くのが一般的です。
この記事では、売買契約書の英語の名称の使い分け、よく使う用語、主な条項の日英対訳の例、英文の売買契約書を翻訳するときの注意点をまとめます。
目次
売買契約書の英語名の使い分け
| 日本語 | 英語 | 補足 |
|---|---|---|
| 売買契約書 | Sales Agreement/Purchase Agreement/Sales Contract | 物の売買で広く使われる呼び方 |
| 売買契約書 | Sale and Purchase Agreement | 売主と買主の両方の立場を表した呼び方。略称の SPA は株式譲渡契約(Share Purchase Agreement)を指すこともあるため、略称だけで書かない |
| 取引基本契約書(売買基本契約書) | Master Purchase Agreement/Basic Sales Agreement/Basic Transaction Agreement | 継続して売買する取引の共通条件を定める契約。個々の注文は個別契約や注文書で定める |
| 個別契約・注文書・注文請書 | Individual Contract/Purchase Order/Order Acknowledgment | 基本契約にもとづく個々の取引の書類 |
| 不動産売買契約書 | Real Estate Purchase Agreement/Real Estate Sale and Purchase Agreement | 土地・建物の売買 |
| 株式譲渡契約書 | Share Purchase Agreement(SPA) | 会社の株式の売買(M&Aなど) |
表題は、原文の契約書に書かれているものに合わせて訳します。Sales Agreement は売主側、Purchase Agreement は買主側から見た呼び方として使い分けられることがありますが、どちらも売買の契約で、契約の中身は表題ではなく条項で決まります。
売買契約書でよく使う用語(日本語・英語・中国語)
| 日本語 | 英語 | 中国語(簡体字) |
|---|---|---|
| 売買契約書 | Sales Agreement | 买卖合同 |
| 売主 | Seller | 卖方 |
| 買主 | Buyer/Purchaser | 买方 |
| 本製品(目的物) | the Products/the Goods | 本产品(标的物) |
| 代金 | Purchase Price | 价款 |
| 注文書 | Purchase Order | 订单 |
| 引渡し | Delivery | 交付 |
| 検査 | Inspection | 检验 |
| 所有権の移転 | Transfer of Title | 所有权转移 |
| 危険の移転(危険負担) | Transfer of Risk/Risk of Loss | 风险转移 |
| 契約不適合 | Non-conformity | 不符合约定 |
| 支払条件 | Payment Terms | 付款条件 |
| 貿易条件 | Trade Terms(Incoterms) | 贸易术语 |
| 不可抗力 | Force Majeure | 不可抗力 |
主な条項の日英対訳の例
物の継続的な売買を想定した、一般的な売買契約書の条項を日本語と英語で並べた例です。実際の契約書は取引の内容に合わせて条件が変わるため、そのまま使うのではなく、訳語や言い回しの参考にしてください。
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| (個別契約)個別契約は、買主が品名、数量、単価、納期及び納入場所を記載した注文書を売主に交付し、売主がこれを承諾したときに成立する。 | (Individual Contracts) Each Individual Contract shall be formed when the Buyer issues to the Seller a purchase order specifying the description, quantity, unit price, delivery date and delivery place of the Products, and the Seller accepts such purchase order. |
| (引渡し)売主は、個別契約に定める納期までに、本製品を個別契約に定める納入場所において買主に引き渡す。 | (Delivery) The Seller shall deliver the Products to the Buyer at the delivery place specified in the Individual Contract no later than the delivery date specified therein. |
| (検査)買主は、本製品の受領後〇日以内に検査を行い、不合格品があるときは、その旨を売主に書面で通知する。 | (Inspection) The Buyer shall inspect the Products within [__] days after receipt thereof and, if any of the Products fail the inspection, shall notify the Seller thereof in writing. |
| (代金の支払)買主は、本製品の代金を、売主の請求書を受領した日から30日以内に、売主の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。 | (Payment) The Buyer shall pay the Purchase Price for the Products by bank transfer to the bank account designated by the Seller within thirty (30) days after receipt of the Seller's invoice. |
| (所有権の移転)本製品の所有権は、代金の支払が完了した時に、売主から買主に移転する。 | (Transfer of Title) Title to the Products shall pass from the Seller to the Buyer upon full payment of the Purchase Price. |
| (危険負担)本製品の滅失、毀損その他の危険は、引渡しの時に、売主から買主に移転する。 | (Risk of Loss) The risk of loss of or damage to the Products shall pass from the Seller to the Buyer upon delivery. |
| (契約不適合)引き渡された本製品が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないときは、買主は、売主に対し、修補、代替品の引渡し又は不足分の引渡しを請求することができる。 | (Non-conformity) If the Products delivered do not conform to the terms of this Agreement with respect to kind, quality or quantity, the Buyer may demand that the Seller repair the Products, deliver substitute Products or deliver any shortfall. |
| (不可抗力)天災地変、戦争、暴動、感染症の流行その他当事者の合理的な支配を超える事由により本契約の履行が遅延し又は不能となったときは、当該当事者はその責任を負わない。 | (Force Majeure) Neither party shall be liable for any delay in or failure of performance under this Agreement caused by natural disasters, war, riots, epidemics or any other events beyond its reasonable control. |
| (準拠法)本契約は日本法に準拠し、日本法に従って解釈される。ただし、国際物品売買契約に関する国際連合条約の適用を排除する。 | (Governing Law) This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan, excluding the application of the United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods. |
英文の売買契約書を翻訳するときの注意点
何の売買かで表題と用語が変わる
物(製品・商品)の売買、不動産の売買、株式の売買では、使う英語の表題も中の用語も変わります。物の売買では Products や Goods、不動産では Property、株式では Shares が目的物になるのが一般的です。特に略称の SPA は、株式譲渡契約(Share Purchase Agreement)の意味で使われることもあるため、表題を略称だけで訳さないようにします。
基本契約・個別契約・注文書の呼び方をそろえる
継続的な取引では、基本契約で共通の条件を決め、個々の注文は注文書と注文請書で成立させる形が多く見られます。基本契約の本文で Individual Contract、Purchase Order、Order Acknowledgment と呼んだ書類は、注文書の様式や添付書類の訳でも同じ呼び方にそろえます。
「所有権の移転」と「危険の移転」を混同しない
所有権がいつ買主に移るか(Transfer of Title)と、目的物がなくなったり壊れたりしたときの損失をどちらが負担するか(Transfer of Risk/Risk of Loss)は別の条項です。代金の完済時に所有権が移り、引渡し時に危険が移る、のように時期が違うことがあるため、title と risk を取り違えないようにします。
貿易条件は略語を訳さず、版も書く
輸出入の売買では、FOB、CIF、DAP などの貿易条件(インコタームズ)が使われます。これらは国際商業会議所(ICC)が定める規則の略語なので、日本語に置き換えずにそのまま残します。インコタームズは改訂されるため、「FOB Yokohama (Incoterms® 2020)」のように、どの版によるかも原文どおりに訳します。2026年10月時点の現行の版は、2020年1月1日に発効した Incoterms® 2020 です。
「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」を訳し分ける
2020年4月1日に施行された改正民法で、売主の責任は「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変わりました。法務省の民法の英訳では、契約不適合は non-conformity(does not conform to the terms of the contract)と訳されています。改正前に作られた契約書の「瑕疵」(defect)と、改正後の「契約不適合」(non-conformity)は、原文の言葉に合わせて訳し分けます。
定義語の統一や、日本語版と英語版のどちらを優先するかは契約書を翻訳するときの注意点で、shall と may の訳し分けは秘密保持契約書(NDA)の英語で説明しています。
英文のひな形を使うときに確認すること
インターネットで手に入る英文の売買契約書(Sales Agreement、Purchase Agreement)のひな形は、外国の法律を前提に書かれているものが少なくありません。日本の会社が使う場合は、少なくとも次の点を確認します。
- 準拠法と管轄裁判所(または仲裁)が、どの国・どこになっているか
- 国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約、CISG)を適用するのか、排除するのか
- 検査の期間と、不適合を見つけたときの通知の期限。日本の商法では、商人間の売買で、買主は受領後遅滞なく検査し、不適合を見つけたら直ちに売主に通知しなければ、その不適合を理由とする請求ができなくなると定めています(商法第526条)。契約でこれと違う期間を決めるかどうかを確認します
- 貿易条件(インコタームズ)の版と、引渡し場所・危険の移転時期が合っているか
- 日本語版も作る場合に、日本語版と英語版のどちらを優先するか
条件の有利不利の判断や相手方との交渉が必要な場合は、弁護士にご相談ください。当事務所では、確定した契約書の翻訳を承っています。
よくあるご質問
売買契約書を英語で何といいますか?
Sales Agreement、Purchase Agreement、Sale and Purchase Agreement、Sales Contract などといいます。継続的な取引の基本契約は Master Purchase Agreement や Basic Sales Agreement と呼ぶこともあります。
Sales Agreement と Purchase Agreement の違いは何ですか?
売主側から見た呼び方か、買主側から見た呼び方かの違いとして使い分けられることがありますが、どちらも売買の契約です。権利や義務の内容は表題ではなく条項で決まります。
英文の売買契約書にウィーン売買条約は適用されますか?
日本では2009年8月1日にウィーン売買条約(CISG)が発効しています。営業所が異なる締約国にある事業者間の物品の売買などには、契約で排除しない限り、原則として条約が適用されます(個人が自分で使うための購入などは対象外です)。準拠法を日本法と定めただけでは条約が排除されたことにならないとされているため、適用しない場合は「条約の適用を排除する」と明記するのが一般的です(JETRO「ウィーン売買条約の概要:日本」)。
売買契約書だけの翻訳も依頼できますか?
当事務所の翻訳サービスは10ページ以上のご依頼を承っています。売買契約書だけでは10ページに満たない場合も、取引基本契約書や仕様書、注文書の様式などとあわせて10ページ以上になる場合はご相談ください。
