「ファンドルートは50万ユーロと聞いた。50万ユーロを用意すれば足りるのか」「夫婦や子どもを含めると、政府費用はいくら増えるのか」――ポルトガルのゴールデンビザ(ARI)を具体的に検討すると、最初に必要になるのが総予算の確認です。
結論から言えば、最低投資額だけでは足りません。AIMAの審査・居住許可発給料は申請者ごとにかかり、更新料、ファンド固有の費用、専門家費用、翻訳・認証、銀行・送金、為替、健康保険、渡航・滞在も別に発生します。
本記事では、2026年8月24日時点のAIMA、ポルトガル法令、司法省の公表資料に基づき、「投資に回す資金」と「戻らない、または別途支払う費用」を分けて整理します。制度全体や家族要件はポルトガル・ゴールデンビザの総合ガイドをご覧ください。

結論:総予算は5つに分けて考える
ポルトガルARIの予算は、次の式で考えると見落としを減らせます。
総予算=適格投資・支援額+AIMA公定料金×申請人数+商品・契約固有費用+申請実務費+為替・送金・保険・渡航等
さらに、最初の支払いだけでなく、2年ごとの更新費と投資維持期間中の費用を別枠で確保します。ファンドへの50万ユーロはAIMA手数料ではなく投資資金です。規制対象であることと、元本や利回りが保証されることは同じではありません。文化・芸術支援も、返還の有無や条件を契約書で確認する必要があります。

2026年に新規申請できる主なルートと最低額
AIMAの現行案内では、次のルートが示されています。円換算は2026年8月21日のECB参考値1ユーロ=185.66円による概算で、銀行の実行レートや送金手数料とは一致しません。
| ルート | 法定最低要件 | 円換算の目安 | 資金面の注意 |
|---|---|---|---|
| 非不動産型の集団投資事業 | 50万ユーロ以上 | 約9,283万円 | 元本・換金時期・収益は保証されない。商品ごとの費用と出口条件を確認 |
| 研究活動 | 50万ユーロ以上 | 約9,283万円 | 対象機関・証明書・支払条件を事前確認 |
| 芸術・文化遺産への投資・支援 | 25万ユーロ以上 | 約4,642万円 | 返還可能性や権利の内容は契約次第。投資元本と同じ前提で扱わない |
| 会社設立・増資 | 50万ユーロ以上+所定の雇用 | 約9,283万円+雇用費 | 給与、社会保険、会計、事業運営を継続費として見積もる |
| 雇用創出 | 10人以上 | 一律の最低資本額なし | 人件費・社会保険・採用・事業維持費を個別積算 |
新規の不動産購入ルートは2023年10月に終了しています。また、現行の適格投資は直接・間接に不動産投資へ向けられません。古い記事の「不動産を買えば申請できる」という前提で送金を進めないことが重要です。根拠はLei n.º 56/2023で確認できます。
非不動産型ファンドルートには、ポルトガル法に基づくこと、投資時点の満期が5年以上であること、投資額の60%以上がポルトガルに本店を置く商事会社へ投資されること等の要件があります。特定の外国ファンドを勧めるものではなく、移民法上の適格性と投資商品の安全性・適合性は別々に判断します。
2026年のAIMA公定料金:1人あたり初回6,946.30ユーロ
AIMAの2026年料金表には通常額とデジタル手続の25%減額欄があります。ARIはオンライン事前登録を行い、実際の支払額はPortal ARIが発行するDUCを優先します。
| 手続 | 通常額 | デジタル減額欄 |
|---|---|---|
| 初回または更新の受理・審査 | 842.80ユーロ | 632.10ユーロ |
| 初回の居住許可発給 | 8,418.90ユーロ | 6,314.20ユーロ |
| 初回合計・1人 | 9,261.70ユーロ | 6,946.30ユーロ |
| 1回の更新 | 4,210.30ユーロ | 3,157.80ユーロ |
| 更新合計・1人 | 5,053.10ユーロ | 3,789.90ユーロ |
デジタル欄の初回6,946.30ユーロは、ECB参考値で約129万円です。家族再統合の初回発給・更新にも同額の欄があり、原則として申請者ごとに発生します。料金は毎年3月1日に物価指数に基づき改定されるため、将来の更新分は現在額より増減する可能性があります。
家族人数別:初回と5年間のAIMA費用
初回カードは発給日から2年間、更新も2年単位です。5年間にわたり途切れなく維持するには、通常は初回に加えて2回の更新時期が来ます。以下は2026年のデジタル減額欄が将来も変わらないと仮定した単純試算で、実際のDUC、改定後料金、申請時期が優先されます。
| 申請人数 | 初回AIMA費用 | 1回の更新 | 初回+更新2回 | 円換算の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 1人 | 6,946.30ユーロ | 3,789.90ユーロ | 14,526.10ユーロ | 約270万円 |
| 2人 | 13,892.60ユーロ | 7,579.80ユーロ | 29,052.20ユーロ | 約539万円 |
| 3人 | 20,838.90ユーロ | 11,369.70ユーロ | 43,578.30ユーロ | 約809万円 |
| 4人 | 27,785.20ユーロ | 15,159.60ユーロ | 58,104.40ユーロ | 約1,079万円 |
たとえば、非不動産型ファンド50万ユーロを1件の主投資としてデジタル欄で初回申請する単純な下限は、変動費を除き次のようになります。
| 家族構成 | 投資額 | 初回AIMA費用 | 固定部分の単純合計 |
|---|---|---|---|
| 本人のみ | 500,000ユーロ | 6,946.30ユーロ | 506,946.30ユーロ(約9,412万円) |
| 夫婦 | 500,000ユーロ | 13,892.60ユーロ | 513,892.60ユーロ(約9,541万円) |
| 夫婦+子2人 | 500,000ユーロ | 27,785.20ユーロ | 527,785.20ユーロ(約9,799万円) |
この表には、ファンド費用、専門家、翻訳・認証、銀行、送金、為替差、保険、渡航、税務・会計は含まれていません。また、投資の時価や償還額を示す表でもありません。

投資額以外に見積書へ入れる7項目
1.商品・契約固有の費用と投資リスク
ファンドでは、取得・設定、運用管理、保管、成功報酬、途中解約、償還等の費用が商品ごとに異なります。EUのPRIIPsルールでは、重要情報書類にリスク指標、最大損失、保有期間、解約条件、一時・継続・付随費用等を示す枠組みがあります。契約前に重要情報書類、ファンド規約、目論見書、監査報告、運用会社・保管機関、全費用、償還条件を読みます。
特に注意したいのは、ファンドの「投資時点で満期5年以上」という要件と、ARI投資を「居住許可の付与日から5年間維持する」という要件が別であることです。審査待ちがあると両者の時計は一致しません。満期後の延長、償還時期、投資変更時のARI維持を契約前に書面で整理します。
2.ポルトガル側・日本側の専門家費用
現地弁護士、移民手続、NIF取得支援、銀行口座、税務・会計、家族書類等の報酬は、業務範囲と人数で変わります。「一式」ではなく、初回、家族追加、更新、補正対応、税の有無、支払時期を分けた書面見積りにします。公表根拠のない相場を総額へ足すのではなく、案件別の見積りで確定させます。
3.翻訳・公証・アポスティーユ・発送
戸籍関係、無犯罪証明、婚姻・扶養、委任状等には、翻訳、認証、公証、アポスティーユ、発送が必要になる場合があります。ロイヤルパートナーズ行政書士事務所の公開料金ページでは、翻訳はA4・1頁5,500円税込から、海外発送は実費+3,300円税込、無犯罪証明書の受取代行は17,600円税込からです。実際の枚数と認証方法で変動します。
4.銀行・海外送金・為替
日本円からユーロへ換える際は、表示レートと銀行の適用レートの差、送金手数料、中継銀行手数料、着金手数料が発生し得ます。50万ユーロでは1円の為替差だけでも50万円の差になります。送金日を一日に集中させるか分けるかは投資判断を伴うため、当事務所が利回りや相場を予測せず、金融機関の見積りと専門家の助言で決めます。
5.健康保険、渡航、滞在
AIMAは、ポルトガルの医療制度の対象であること、または申請期間をカバーする国際的に認められた健康保険等を必要書類として案内しています。Portal ARIはAIMA窓口への出頭を伴う手続を案内しているため、申請者の航空券、宿泊、現地移動、日程変更費も予算に入れます。
6.更新と投資維持の費用
初回許可だけで終わりません。2年ごとのAIMA更新料、投資商品の継続費、専門家の更新対応、書類再取得、保険、渡航、最低滞在の実行費を見込みます。2026年料金を据え置いた参考値では、1人が5年間を維持するためのAIMA費用は初回+更新2回で14,526.10ユーロです。
7.税務・国籍を別の判断として扱う費用
ARI取得だけで、ポルトガルまたは日本の税務上の居住地が自動的に決まるわけではありません。滞在日数、常用住居、所得、家族、法人等で結論が変わるため、必要な場合は日葡双方の税理士等へ個別に相談します。
また、2026年5月19日施行のLei Orgânica n.º 1/2026により、日本人の新規帰化申請は原則として合法居住10年です。5年で自動的に国籍を取得できる制度ではありません。日本人が自己の意思で外国籍を取得する場合の日本国籍の扱いも含め、居住許可、永久許可、国籍は別々に判断します。
支払い前にそろえる4つの書面
- 移民法上の適格性メモ:選んだルート、金額、家族、投資実行時期、維持期間、必要書類を現行法と照合したもの
- 総費用見積り:AIMA、専門家、商品、銀行、翻訳・認証、保険、渡航、更新を分け、支払先・時期・返金条件を示したもの
- 投資商品の重要書類:リスク、最大損失、費用、満期、途中解約、償還、運用会社・保管機関を示したもの
- 12か月の実行表:資金準備、資金源資料、書類取得、送金、オンライン申請、出頭の順序と担当者を示したもの
投資を実行しても居住許可は保証されません。審査で不許可、取下げ、商品解約となった場合に、何が返金され、何が戻らないかを各契約で確認します。
12か月以内に動く場合の考え方
「12か月以内に動く」は、12か月以内のカード発行を約束する意味ではありません。AIMAは新規ARIについて、投資、書類審査、補正、予約、生体情報、カード受領をすべて含む確約可能な平均総期間を公表していません。
12か月で管理すべきなのは、候補ルートを決め、申請人数と総予算を固め、資金源資料と家族書類を用意し、適格性と契約条件を確認したうえで申請準備を進めることです。処理期間を断定せず、準備開始時期と資金拘束期間を分けて計画します。
よくある質問
Q1.50万ユーロを用意すれば、ファンドルートの申請費用は足りますか?
足りません。50万ユーロは適格投資の最低額です。AIMAの初回公定料金はデジタル欄で1人6,946.30ユーロで、商品固有費用、専門家、銀行・送金・為替、書類、保険、渡航等が別に発生します。
Q2.家族を追加すると投資額も人数倍になりますか?
家族再統合を主申請に付ける前提では、最低投資額を人数倍する計算ではありません。一方、AIMAの審査・許可料金は原則として各申請者に発生します。夫婦と子2人の4人なら、2026年デジタル欄の初回AIMA費用は単純計算で27,785.20ユーロです。
Q3.不動産を買えば新規申請できますか?
できません。旧不動産ルート等の新規受付は2023年10月に終了し、現行の適格投資は直接・間接に不動産投資へ向けられません。既存許可や施行日前の係属案件には経過措置があるため、新規相談と分けて扱います。
Q4.規制対象のファンドなら元本は守られますか?
元本や利回りは保証されません。移民法上の適格性、監督・登録の有無、商品の投資リスクは別の論点です。重要情報書類、規約、監査報告、全費用、満期・償還・途中解約条件を読み、必要に応じて独立した金融・法務・税務の助言を受けます。
Q5.5年後に国籍を取得できますか?
新規の日本人申請者について、その表現はできません。2026年5月19日施行の国籍法では、新規帰化申請は原則として合法居住10年で、言語・文化等を含む別要件があります。ARI、永久許可、国籍は自動的につながるものではありません。
Q6.12か月以内に居住カードを受け取れますか?
一律には約束できません。AIMAは新規ARIの確約可能な平均総処理期間を公表しておらず、書類、補正、予約、生体情報等で変わります。12か月以内に申請準備を始める計画と、カード発行時期の見込みは分けて考えます。
Q7.円建ての必要額はどう決めますか?
記事の円換算はECB参考値による概算です。実際には金融機関の適用レートと手数料を使い、投資額、AIMA費用、変動費、更新予備費に分けて算出します。為替の利益や損失を予測して申請を勧めることはしません。
まとめ:最初に「投資額」と「費用」を分ける
ポルトガルARIの検討で重要なのは、50万ユーロまたは25万ユーロという入口の数字だけで判断しないことです。AIMA公定料金は人数分、更新は2年ごとに発生し、商品、専門家、書類、銀行、為替、保険、渡航にも別の支出があります。さらに、投資商品の満期と、居住許可付与日からの5年間の維持要件は同じ時計ではありません。
候補国がポルトガルで、12か月以内に準備を始める可能性があり、必要予算の見通しが立つご本人または意思決定者の方は、まず総額と適格性を同じ表で整理してください。
20分の海外移住適合性確認
「20分の海外移住適合性確認」では、目的、希望時期、申請人数、準備可能な予算を伺い、現行制度に照らして、検討できるルート、初期費用、更新費、次の手続を整理します。制度要件とご希望が合わない場合も率直にお伝えします。取得可否、処理期間、投資成果、税務上の結果を保証するものではありません。

